フェストロリウム導入品種の温暖地における生育特性と適応性

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要約

トールフェスクとライグラスの属間雑種である導入品種「Felina」は、オーチャードグラスに比較して収量性、越夏性及び葉腐病抵抗性が同程度か優れ、温暖地におけるフェストロリウムの育種素材として有望である。他方、メドウフェスクとライグラスの雑種四倍体フェストロリウム導入品種は、温暖地における適応性が低い。

  • キーワード:フェストロリウム、イネ科牧草、越夏性、適応性、飼料作物育種
  • 担当:畜産草地研・飼料作物開発部・牧草育種法研究室、上席研究官
  • 連絡先:電話0287-37-7550、電子メールkazuuchi@affrc.go.jp
  • 区分:畜産草地
  • 分類:科学・参考

背景・ねらい

フェストロリウム(FL、Festulolium)は、Festuca属(トールフェスク(TF)またはメドウフェスク(MF))の環境耐性、永続性と、Lolium属(イタリアンライグラス(IR)またはペレニアルライグラス(PR))の生産性、高品質・嗜好性を併せ持つよう人為的に作出された属間雑種である。畜草研においては温暖地に適したFL品種の開発を行っており、2006年度には新系統が育成が予定されているが、さらにタイプの異なる系統育成に向けて、海外で育成された最新品種等について、我が国温暖地における適応性を中心とした諸特性を評価し、育種素材としての有用性を検討する。なお、対照草種として、温暖地で最も利用され、適応性が高い草種であるオーチャードグラスを主体に比較する。

成果の内容・特徴

  • 利用3年間合計収量について、TFとライグラスの交配に由来する六倍体(以下TF型)FL品種「Felina」は、温暖地に適した我が国育成のオーチャードグラス(OG)品種「マキバミドリ」及びハイブリッドライグラス(HR)品種「ハイフローラ」と並んで最多収である(図1)。「Felina」以外のMFとライグラスの交配に由来する四倍体(以下MF型)FL品種の収量性は、OG、HRと比較して低く、IR「アキアオバ」、PR「ヤツユタカ」、MF「ハルサカエ」と同程度である(図1)。
  • 越夏性及び関連する夏の病害である葉腐病抵抗性について、TF型の「Felina」はOG同様最も優れる。MF型品種は劣る(表1)。
  • 最終刈り後の雑草侵入程度からみた永続性についても、「Felina」はOG同様最も優れ、MF型品種は劣る(表1)。
  • 乾物分解率(酵素法による消化性)について、越夏性と関連する3番草ではOGとFL品種間に有意差はない。しかし、全番草平均では、「Felina」はOGよりやや低く、MF型品種はOGより高い(表1)。
  • 出穂始日(1番草)について、OG中生品種「マキバミドリ」(5月10日頃)と比較して、Felinaは3日程度早く、MF型品種は同程度かやや遅い(表1)。
  • FL品種の中で、TF型の「Felina」は我が国温暖地での適応性が高く、育種素材として有用である。MF型品種については、現レベルの越夏性では温暖地での直接利用は難しい。

成果の活用面・留意点

  • 温暖地におけるFLの栽培、育種に関して有効な情報となる。
  • TF型品種「Felina」は、乾物分解率の改良が必要である。MF型品種には、フェスク及びライグラスの国内育成品種を交配母材に用い、越夏性を大幅に改良する必要がある。
  • 本試験は、少回(採草)刈り条件下で行った結果であり、多回刈り及び放牧条件では異なる可能性がある。

具体的データ

図1.温暖地(蓄草研・那須)における利用3年間合計乾物収量

 

表1.温暖地における生育特性

その他

  • 研究課題名:Dactylis属植物等主要牧草類の遺伝資源の収集・導入・評価
  • 予算区分:ジーンバンク
  • 研究期間:2001~2004年度
  • 研究担当者:内山和宏、小松敏憲、荒川 明、水野和彦