除草剤耐性遺伝子組換えトウモロコシ栽培による圃場環境への影響のモニタリング

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要約

トウモロコシの除草剤グリホサート耐性遺伝子組換え品種と非組換え品種を一般圃場に4年間作付けしたところ、環境への影響は、組換え遺伝子に起因するものは認められず、グリホサート処理と慣行除草剤処理の違いによるもののみが認められた。

  • キーワード:遺伝子組換え体、除草剤耐性、長期、モニタリング、トウモロコシ、飼料作物育種
  • 担当:畜産草地研・飼料作物開発部・ヘテロシス研究室
  • 連絡先:電話0287-37-7551、電子メールkika@affrc.go.jp
  • 区分:畜産草地
  • 分類:科学・参考

背景・ねらい

我が国では、組換え作物については、遺伝子組換え生物等の使用等の規制による生物の多様性の確保に関する法律(カルタヘナ法)に基づいて隔離圃場で栽培・評価し、その安全性を確認している。しかし、市民参加のコンセンサス会議などからは、組換え作物の長期栽培が農業生態系に生育・生息する生物に及ぼす影響については、さらなる調査が求められている。
そこで、これらの要望に応えるため、すでに隔離栽培試験で安全性が確認されている、トウモロコシ除草剤耐性組換え品種と組換え遺伝子の有無のみが異なる非組換え品種を用いて一般圃場で実規模の長期栽培を行い、圃場内に生育・生息する植物、昆虫、土壌微生物等の生物相の動態を調査する。

成果の内容・特徴

  • 着雌穂高は、除草剤グリホサート耐性品種をグリホサート処理した試験区(GM+G区)が、除草剤耐性品種を慣行除草剤処理した試験区(GM区)および非組換え品種の慣行除草剤試験区(非GM区)の2区に比べ低い傾向がある。また、収量形質は、試験期間を通じてGM+G区の収量が他の2区に比べ高い傾向があり、GM区と非GM区の間では差はみられない(表1)。
  • 雑草の植生推移は,年次による差はあるが、全体を通してGM+G区と、他の2区との間でグリホサート処理直前と収穫期の被植率に明瞭な差が認められる(図1)。
  • 昆虫類、クモ類個体数は、GM+G区が他の2区に比べ多い傾向がある。慣行除草剤処理のGM区と非GM区の間の差は見られない(図2)。
  • 播種後と収穫後の土壌では、細菌数には差は認められないが、放線菌数および糸状菌数はGM+G区で高い傾向がある(表2)。
  • 以上のことから、慣行除草剤処理での組換え品種と非組換え品種との差異は認められず、圃場内の雑草植生、昆虫相、土壌微生物相への影響は、グリホサートを使用した試験区のみで異なる様相を示し、組換え遺伝子に起因するものではなく使用する除草剤の違いによる影響が大きい。

成果の活用面・留意点

  • 組換え体トウモロコシ品種の国内の一般圃場での栽培における環境影響の基礎データとして活用する。
  • 農林水産省規定の第1種使用規程承認組換え作物栽培実験指針に沿って、他のトウモロコシ栽培圃場と十分隔離距離をとって栽培実験を行なった。

具体的データ

表1.各年度のトウモロコシの着雌穂高、収量形質

 

図1.各区の雑草被植度の推移 図2.昆虫類、クモ類の1株あたり個体総数推移

 

表2.播種直後と収穫後における土壌微生物数

その他

  • 研究課題名:組換え作物の長期栽培による環境への影響モニタリング
                      -除草剤耐性トウモロコシの長期栽培が生物相に及ぼす影響-
  • 予算区分:安全性確保
  • 研究期間:2001~2004年度
  • 研究担当者:黄川田智洋、大同久明、神田健一、黒川俊二、森田聡一郎、吉村義則、安藤象太郎、伊東栄作