放牧前後の草量から被食量を推定するプログラム

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要約

放牧前後の草量から被食量を推定する方法は、牧草の生長を無視するため、短期間しか適用できず精度も低いが、放牧期間中の牧草の生長と被食の関係を組み込むことにより、適正に被食量を推定するプログラムを開発した。

  • キーワード:被食量推定、放牧、牧草、野草、家畜、ウシ
  • 担当:畜産草地研・草地生態部・植生生態研究室
  • 連絡先:電話0287-37-7225、電子メールisis@affrc.go.jp
  • 区分:畜産草地
  • 分類:科学・参考

背景・ねらい

草地における植物の生長速度は草量に対して放物曲線、日被食量は草量に対して飽和曲線を描く(図1)。草量測定値を用いる従来法(前後差法、内外差法、リネハン法)の欠点を補うため、図1の関係を組み込み、より精度の高い被食量推定のためのプログラムを開発する。

成果の内容・特徴

  • 放牧期間中の草量の変化速度(dB/dt )は式1によると仮定する。式1の右辺第一項が植物の生長速度、右辺第二項が家畜の日被食量を表す。K は植物の飽和生長量、r は植物の初期比生長速度、h は臨界被食圧、dh が1/2になるときの草量である。
  • 放牧前の草量測定値に式1から計算される毎日の草量変化量を加算していき、放牧後の草量測定値に最も適合するように、式1の日被食量のパラメータ(h )をプログラム上で変動させる(図1の破線)。最も適合したh を用いて、期間中の被食量を推定する。
  • 被食量推定プログラムは、汎用集計表ソフトのマクロで作成している(図2)。操作は画面上でKrd を設定し、放牧前後の草量と日数を入力する。プログラムを実行すると、期間全体の被食量、期間中の草量、植物生長速度及び日被食量の動態が表示される。放牧の前後でなくとも放牧期間中の任意の2時点の草量を用いてもその間の推定が可能である。
  • 図3に示すように、本手法とケージ内外差法で推定したシバ草地の体重当たり日被食量のデータのばらつきは本手法で小さい。これより本手法のプログラムを用いることで、被食量の推定誤差の改善が期待できる。

成果の活用面・留意点

  • プログラムは市販のソフトウェアExcel上で動く。希望者には配布する。
  • 2時点の草量のみから被食量を推定できるので簡便で応用範囲が広い。
  • 対象草地のパラメータKrd を設定する。Kr は、同一放牧草地のケージ利用による刈り取り草量のデータが蓄積されている場合、生長解析により算出できる。または、文献値等を参照して汎用的な値として利用する。シバ放牧草地では5月中旬から8月末までは、K =170 g DM/m2r =0.0392、d =30.4 gDM/m2が利用できる。パラメータd は、ほとんどの草地で30-40 g DM/m2の範囲にあり、この範囲内に設定すれば大きな差異は生じない。
  • 成長中もしくは肥育中の家畜の被食量を推定する場合は、測定2時点の間隔を2週間以内に抑える。

具体的データ

式1図1.草量と植物生長速度および日被食量の関係

 

図2.集計表ソフトのマクロプログラムによる被食量推定

 

図3.シバ草地のデータに従来法と本モデルを適用して日被食量を算出した例

その他

  • 研究課題名:半自然草地における放牧家畜群の食草量推定モデルの開発
  • 予算区分:交付金
  • 研究期間:2003~2004年度
  • 研究担当者:板野志郎、堤 道生、坂上清一、中神弘詞