交雑種去勢牛における稲発酵粗飼料の全期間給与肥育法

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要約

稲発酵粗飼料を肥育全期間にわたって給与すると、前期にチモシー乾草、中後期稲ワラ給与の慣行肥育に比較して、中後期の粗飼料摂取量が多く、増体が優れる傾向を示す。また、稲発酵粗飼料の全期間給与は、慣行肥育に比較して、枝肉成績で差はない。

  • キーワード:稲発酵粗飼料、交雑種、肥育、肉用牛、飼料利用
  • 担当:畜産草地研・家畜生産管理部・産肉技術研究室
  • 連絡先:電話0287-37-7811、電子メールnaoto@affrc.go.jp
  • 区分:畜産草地
  • 分類:技術・普及

背景・ねらい

稲発酵粗飼料の肥育牛への給与試験は黒毛和種が中心であり、交雑種を用いた試験はほとんどない。また稲発酵粗飼料に含まれるβ-カ ロテンのために、稲発酵粗飼料の給与は肥育前期及び後期に限られ、肥育中期に給与を控える場合が多い。そこで肥育全期間を通して交雑種去勢牛に稲発酵粗飼 料を給与する肥育を行い、チモシー乾草と稲ワラを給与した慣行肥育と肥育成績や牛肉品質を比較・検討した。

成果の内容・特徴

  • 給与した稲発酵粗飼料の飼料イネ品種は「はまさり」である。飼料イネを黄熟期に収穫し、乳酸菌製剤として畜草1号を 使用して、稲発酵粗飼料をサイレージ調製する。稲発酵粗飼料のV-スコアは99であり、発酵品質は良好である。また稲発酵粗飼料、チモシー乾草、稲ワラ、 濃厚飼料の乾物1kg中のビタミンE含量はそれぞれ147、7、28、16mgであり、β-カロテン含量は55、25、2、0.2mgである。
  • 肥育前期の濃厚飼料と粗飼料の摂取量はWCS区と慣行区で同じであり、肥育中後期はWCS区の粗飼料摂取量が多い。1日当たりの体量増加(DG)は有意ではないが、WCS区が肥育期間を通じて大きい傾向を示す(表1)。
  • 肥育前期の血漿中ビタミンA濃度は両区とも80IU以上を示し、肥育中後期は、慣行区の血漿中ビタミンA濃度は減少しWCS区も減少傾向を示す。 肥育前期のWCS区の血漿中ビタミンE濃度は増加するが、肥育中後期のWCS区の血漿中ビタミンE濃度は変化せず慣行区と差がなくなる(図1、2)。
  • 枝肉成績はWCS区と慣行区で差が認められない。胸最長筋の脂肪含量とビタミンE含量も両区で差が認められない(表2)。また牛脂肪色基準(BFSナンバー)は、両区で差が認められず、稲発酵粗飼料の給与による脂肪の黄色化はない。

成果の活用面・留意点

  • 稲発酵粗飼料を用いた交雑種去勢牛の肥育に利用できる。
  • 肥育中期以降の濃厚飼料多給により稲発酵粗飼料の摂取量が少ない期間が続くと、牛肉中のビタミンE含量は稲ワラ給与と差がなくなる可能性がある。

具体的データ

表1 肥育期間中の飼料乾物摂取量と増体成績(kg)

 

図1  肥育にともなう血漿中ビタミンA濃度の変化

 

図2 肥育にともなう血漿中ビタミンE濃度の変化

 

表2 枝肉成績

 

その他

  • 研究課題名:飼料イネサイレージ給与による交雑種去勢牛の肥育技術の開発
  • 予算区分:ブラニチ3系
  • 研究期間:2003∼2005年度
  • 研究担当者:中西直人、河上眞一、山田知哉