臭気抑制効果と作業効率が高い浅層型スラリーインジェクタ小型改造III号機

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要約

浅層型スラリーインジェクタの小型改造III号機は、わが国都府県の標準的草地圃場において作業が可能で、作業能率は1.2ha/hであり表面散布機に比べて17%高い。浅層施用により窒素成分が土中にとどまり、臭気の発生を抑えることができる。

  • キーワード:家畜ふん尿、作業、スラリーインジェクタ、浅層施用、作業能率、臭気低減
  • 担当:畜産草地研・飼料生産管理部・栽培工学研究室
  • 連絡先:電話0287-37-7801、電子メールnsumida@affrc.go.jp
  • 区分:畜産草地
  • 分類:技術・普及

背景・ねらい

家畜ふん尿(スラリー)の圃場還元は直接表面散布が主流を占めているが、散布時の臭気や表面流亡等の環境問題を引き起こすことがあ る。このため、旧草地試験場においても注入爪に22度を限界とした可動機能を付加することにより旋回中にも施用可能となる機構を有するスラリーインジェク タの開発を進めた(平成12年草地飼料作研究成果、浅層に注入できる多条型スラリーインジェクタ)。欧州の大規模草地でも土中へスラリーを施用するイン ジェクタが普及し始めているが、150 kW級のトラクタを必要としている。そこで、小型普及機械開発の要望を受けて、さらに土中施用深を安定化させる機構等の開発と改良により新たにIII号機を開 発し、機能性の確認、作業能率、臭気低減効果等を明らかにする。

成果の内容・特徴

  • 開発した浅層型スラリーインジェクタIII号機は、JAKO社製インジェクタをベースに注入爪の可動機能の改造等を行 い、施用作業幅を4.8mから3.2mに縮小し、注入ユニットを24から8へ減らすことにより小型化を図ったことから、機関出力が88kW(120PS) 程度のトラクタにより深さ0-12cmの浅層土中へスラリーを注入できる(図1)。
  • 本機と直下滴下型表面散布機について、同一トラクタを用いて作業能率を比較したところ、作業幅は前者が3.2m、後者が3.8mであるが、本機では最外周の旋回中も土中施用作業を実施できるので、供試圃場内の作業能率は1.2ha/hであり、約17%高い(表1)。
  • スラリーを土中施用した場合のスラリー由来の窒素成分は、施用後2日まで土中に留まっているため、表面散布後の草地と比較して地表への流亡や空中へのロスが少ない(図2)。
  • アンモニア検知管により臭気低減効果を比較した結果、施用直後で差は少なく、高さ1m程度で臭気を感じられるものの検出できなかった。しかし、施用直後から30分間捕集した場合には、アンモニア濃度の低減効果が最も顕著に現れた(図3)。

成果の活用面・留意点

  • 現地一般圃場での性能比較試験では88kWのトラクタを用いたが、74kWのトラクタによる稼働を確認しており、都府県の50a規模の草地において利用できる。
  • 性能比較試験は、表面散布を行っている現地一般圃場において、同一のトラクタ、スラリーを用いて土中施用を行った。

具体的データ

図1 改造したスラリーインジェクタ

 

表1 供試圃場(30a:24m×125m)での浅層型インジェクタと表面散布機の能率比較

 

図2 スラリー施用後の窒素成分(mg/100g)の推移(施用スラリー3.9mg/100g)

 

図3 浅層施用と表面散布後の発生臭気比較(北川式ガス検知管によるアンモニア測定、n=3)

 

その他

  • 研究課題名:浅層型スラリーインジェクタによる環境負荷低減技術
  • 予算区分:バイオリサイクル
  • 研究期間:2002∼2005年度
  • 研究担当者:住田憲俊、澤村篤、井上秀彦