半導体センサーを用いた反すう動物用メタン・水素ガスモニター

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要約

半導体センサーを用いて反すう動物の呼気中のメタン及び水素ガスを10秒ごとに1ppmの感度で経時的に測定する装置で、バッテリーで駆動することができる。ウシの呼気中からのメタン・水素ガス濃度の変化を詳細に測定することが可能である。

  • キーワード:反すう動物、ウシ、メタン、水素、半導体センサー、モニタリング
  • 担当:畜産草地研・家畜生理栄養部・消化管微生物研究室
  • 連絡先:電話029-838-8660、電子メールakio@affrc.go.jp
  • 区分:畜産草地
  • 分類:技術・参考

背景・ねらい

反すう動物のルーメン発酵由来のメタン生成量は、地球上全体の発生量の十数%に及んでいる。メタンは二酸化炭素の二十数倍の地球温 暖化効果を持っていること、また、反すう家畜の飼料中エネルギーの損失にもつながっていることから、その抑制技術の開発が急務となっている。これまで、反 すう動物からのメタン発生量を正確に測定するためには、大規模な代謝チャンバー等の施設が必要であった。
最近になって、半導体ガスセンサーを用いてメタンや水素ガスを感度よく測定することが可能となってきていることから、半導体センサーを用いて簡便に反すう動物の呼気中のメタン及び水素ガスを経時的に測定する装置を開発した。

成果の内容・特徴

  • 本装置は測定ユニット及びバッテリーユニットからなり(図1)、ベルト等でウシなどの大型の反すう動物に装着することも可能である。
  • 本装置はメタン(0∼1000 ppm)、水素ガス(0∼100 ppm)、及び炭酸ガス(0∼10%)を同時に10秒ごとに測定することが可能であり、充電式ニッケル水素電池により約20時間稼働し、蓄積されたデータはシリアルポートを介してコンピューターに取り込むことができる。(表1)。
  • 本装置を体重約650kgのホルスタイン種雌ウシを入れた代謝チャンバー内に設置して、飼料給与後のメタン及び水素ガス濃度を測定したところ、図2に示すとおり、メタン濃度は飼料給与後約50分で900 ppmまで達し、水素ガス濃度は飼料給与後約30分で40 ppmまで達する。水素ガス濃度は飼料給与後約2時間半で0 ppmとなるが、メタン濃度は600∼700 ppmを維持している。
  • 本装置で得られたメタン濃度の値と、代謝チャンバー装置によって測定されたメタン濃度の日内変動を比較したところ、本装置の吸入口が動物の頭部に近い位置だったために測定された値が常に100∼200 ppm程度高かったが、変動パターンはほぼ同一である(図3)。

成果の活用面・留意点

  • 具体的な使用例として、本装置と簡易なヘッドチャンバーを用いることにより、簡便に反すう動物の呼気中のメタン及び水素ガス濃度の変化を正確に測定することが可能であり、チャンバーの換気量を正確に制御すれば簡便にメタン及び水素ガス発生量を測定することができる。
  • 半導体センサーは低湿度によって感度が低下することから、特に、標準ガスで校正する場合には水蒸気圧を飽和にする必要がある。
  • 本装置は市販に供される予定である。

具体的データ

図1.メタンモニター(mBA-5000)の外観

 

表1 メタンモニター(mBA-5000)の主な仕様

 

図2.飼料給与後のメタン、水素ガス濃度の変化

 

図3.代謝チャンバー内におけるメタン濃度日内変動の比較

 

その他

  • 研究課題名:分子生物学的手法を用いた細菌の定量とバイオガス発生メカニズムの解明
  • 予算区分:科研費
  • 研究期間:2003∼2005年度
  • 研究担当者:竹中昭雄、田島清、三森真琴、梶川博、植田秀雄(ミトレーベン研究所)、片山義和(アドニスエンジニアリング)