ギ酸の添加によるイモ焼酎粕の保存性改善
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要約
保存性が悪いとされるイモ焼酎粕にギ酸を添加することにより、雑菌の増殖を抑えて保存性を改善できる
- キーワード:ブタ、飼料利用、焼酎粕、ギ酸
- 担当:畜産草地研・家畜生産管理部・飼料評価研究室
- 連絡先:電話029-838-8648、電子メールtkawa@affrc.go.jp
- 区分:畜産草地
- 分類:技術・参考
背景・ねらい
イモ焼酎の製造時に副生する焼酎粕は平成19年には海上投棄も禁止されるため、その利用技術の開発が急務となっている。イモ焼酎の
産地である南九州は家畜の飼養頭数が多いが、輸入飼料に強く依存しているためその改善が求められている。食品残さ飼料化の一形態として、水分の多い原料を
液体のまま豚に給与するリキッドフィーディングを採用する農家が増えつつあるが、その場合、原料の保存性確保が重要である。そこで飼料添加物として認めら
れている有機酸のうち安価であるギ酸添加による焼酎粕の保存性改善効果を明らかにする。
成果の内容・特徴
- 焼酎粕を対照区(n=3)と0.2%ギ酸添加区(n=3)に分け、25℃で軽くフタをして10日間静置する。その結果、両区間で焼酎粕の状態に差が見られ、対照区では発酵が進むが、ギ酸添加区では水層と沈殿層に分かれ、開始時と同じ状態である(写真)。
- pHは、0日目では4.0である。その後、対照区は4日目に3.8に減少する。一方、ギ酸添加区ではギ酸添加後3.4まで下がり、試験期間中変動がない。
- 焼酎粕中生菌は、0日目にはほとんど検出されない。対照区では好気性菌・酵母生菌が4日目にそれぞれ107、106CFU/mlに達する。ギ酸添加区では4日めにそれぞれ102、101CFU/mlを示し、ギ酸添加区で顕著に増殖が抑えられる(図1・2)。大腸菌群生菌は両区とも検出されない。
- 焼酎粕にそれぞれ0.0125、0.025、0.05、0.09、0.18%のギ酸を添加し、軽くフタをして室温で
7日間静置後、焼酎粕中の好気性菌、酵母および大腸菌群生菌数を測定する。好気性菌生菌数は、0.18%添加では105.5CFU/ml、0.09%添加
では106.3CFU/mlと低い値を示す。一方、それ以外のサンプルは約108CFU/mlに達し、対照とほとんど差がない(図3)。また酵母においても同様の傾向が見られる。大腸菌群はいずれも検出されない。
成果の活用面・留意点
- リキッドフィーディング用飼料原料としての利用が期待される。
- ギ酸の添加量は飼料安全法に0.5%までと定められている。
- 焼酎粕の排出現場において雑菌の混入の程度が異なるため、実際に利用する際にはギ酸の添加効果についてあらかじめ確認する。
具体的データ




その他
- 研究課題名:食品残さの発酵リキッドシステムの開発-有機性資源の飼料価値評価と迅速・簡便評価技術の開発
- 予算区分:バイオリサイクル
- 研究期間:2002∼2006年度
- 研究担当者:川島知之、田島 清、大森英之、大塚 舞、小橋有里