イネWCSに含まれる籾から籾殻を効率的に剥離又は籾ごと破砕する方法

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要約

互いに逆方向に回転する2本の特殊形状のローラ間を通過させる処理によってイネWCS中の籾から籾殻を剥離又は籾ごと破砕でき、籾殻剥離・破砕率は88%以上と高能率である。

  • キーワード:飼料利用、調製加工、イネWCS、籾殻剥離、ローラ、せん断力、消化性
  • 担当:畜産草地研・家畜生産管理部・調製工学研究室
  • 連絡先:電話0287-37-7803、電子メールkazuto@affrc.go.jp
  • 区分: 畜産草地、共通基盤・作業技術
  • 分類: 技術・参考

背景・ねらい

稲発酵粗飼料(イネWCS)を乳肉牛用飼料として利用する場合、穀実が消化されにくい籾殻に覆われているため未消化のまま排泄され る籾が15%∼50%程度あることが問題となっており、この割合を少なくすることにより栄養価の向上が期待できる。消化性を高める方法として、物理的作用 により籾に損傷を与えるか籾殻を一部でも剥離することにより消化液が穀実に触れるように処理する方法の開発が望まれている。そこで、細断した飼料イネの籾 殻を剥離することにより籾の消化性を改善できる装置を開発する。

成果の内容・特徴

  • 開発したイネWCSの未消化籾を低減させるための調製装置(特許出願中)は、試料を投入するホッパ、2本の鉄製の籾殻剥離用回転ローラ、片方のローラに水平力を作用させる機構等からなる(図1)。駆動には三相ACモータを用いている。
  • ホッパに投入されたイネWCSは、互いに逆方向に回転する2本の籾殻剥離ローラ間を通過する際に、籾から籾殻が剥離又は籾ごと破砕されて下方に落下する。
  • 籾殻剥離ローラは図1、2の ようになっており、ローラ間に挟まれた籾に効果的にせん断力が作用する。ローラの回転速度は、せん断力をより有効に作用させるため片方を10%増速させて いる。片方のローラは回転軸が水平方向に移動でき、バネでもう一方のローラに押し付けられており、通過する試料を水平方向に圧縮しながら籾殻を剥離又は籾 ごと破砕する(図2)。 ローラ間の間隙は試料が供給されない時は密着しているが、ローラ間を通過する試料の量に応じて間隙が広がる。水平力は 100N∼2kN(1N≒0.1kgf)程度の間で試料の状態に応じて設定できる。ローラの周速度は0.2∼1.5m/s程度で試料の状態に応じて適宜設 定する。
  • 所要動力、処理能力、籾殻剥離・破砕率は表1の通りであり、時間当たり処理量は数cmに細断された含水率60%程度のイネWCSにおいて0.3∼1.0t/h、所要動力0.3∼0.8kWであり、籾殻剥離率は88%以上(表1)と十分な性能を有する。

成果の活用面・留意点

  • ロールベール開封後の給与前に用いることを想定した処理方法であり、イネWCSの消化性を向上させるための機械開発に活用できる。
  • 飼料用籾に対しても利用可能である。
  • 処理されたイネWCSを実際に給与した場合の消化性改善効果については別課題で試験中である。

具体的データ

図1 処理装置正面模式図及び籾殻剥離ローラ

 

図2 籾殻剥離に寄与するせん断力作用

 

表1  籾とイネWCSを供試した場合の処理能力

 

図3イネWCS 処理前(左) 処理後(右)

 

その他

  • 研究課題名:イネWCSの未消化籾低減調製技術の開発
  • 予算区分:ブラニチ3系
  • 研究期間:2004∼2005年度
  • 研究担当者:重田一人、喜田環樹、松尾守展