天然物由来のアルギン酸塩を基材とした乳頭保護シール資材

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要約

海草などの天然物由来アルギン酸塩を基材とした乳頭保護シール資材は、搾乳後の乳頭に施用するものでゲル状皮膜形成によって乳頭部 分を物理的に保護でき、剥がすことも容易である。市販のヨウ素系消毒剤を添加混合することにより搾乳後の乳頭表面細菌数を少なく保つことが可能となる。

  • キーワード:乳用牛、家畜管理、搾乳作業、乳頭、保護シール、アルギン酸塩、ヨウ素
  • 担当:畜産草地研・家畜生産管理部・家畜管理工学研究室
  • 連絡先:電話0298-38-8678、電子メールsankih@affrc.go.jp
  • 区分:畜産草地、共通基盤・作業技術
  • 分類:技術・参考

背景・ねらい

生乳中の細菌数は、畜舎や搾乳施設の衛生状態、乳頭の衛生管理等の影響を受ける。特に乳頭を衛生的な環境に保つことは、乳房炎の発 症防止の観点からも管理上の重要な要件となっている。そこで、搾乳後の乳頭管理作業において、作業が簡易で習熟が不要、乳頭を汚れから保護して抗菌的環境 を維持、分解が容易で堆肥などに混入しても問題を起こさない、を目標とした乳頭保護シール資材を開発する。

成果の内容・特徴

  • 海草由来の天然資材であるアルギン酸塩を主剤とした乳頭保護シール資材は粉末状で、水と少量のヨウ素系消毒剤を加えて攪拌することにより糊状とし、紙コップ等を利用して搾乳後の乳頭に付着させて使用する(写真1)。
  • 乳頭に付着したシール資材は、数分で柔軟なゲル状皮膜を形成し、乳頭部分を物理的に保護することができ、作業者が容易に手で剥がすことが可能である(写真2)。剥離後の資材は分解が容易で堆肥などに混入しても問題は少ない。
  • 皮膜形成された保護シールは、起立横臥動作の繰り返しにより乳頭から剥れる場合がある。しかし被覆が維持されている乳頭は物理的保護と消毒剤添加の効果により、施用後5時間を経過しても施用前より低い乳頭表面細菌数を示し、乳頭面を清浄に保つことが可能である(表)。

成果の活用面・留意点

  • 環境負荷の問題が少ない天然素材の乳頭保護シール資材として活用され、搾乳終了直後から2-3時間の最も保護が必要な時間帯の乳頭端保護と乳頭表面細菌数抑制の資材として利用できる。
  • シール資材の附着性と剥離性の均衡調整および加水・攪拌後の施用作業可能時間の延長については、アルギン酸塩と副資材との配合調製を更に検討する必要がある。

具体的データ

写真1 紙コップによる施用作業

 

写真2 ゲル皮膜と手による剥がし作業

 

表 保護シール材施用前と施用5時間後の乳頭表面の細菌数

 

その他

  • 研究課題名:乳頭保護シール施用技術の開発
  • 課題ID:12-03-01-*-15-05
  • 予算区分:食品
  • 研究期間:2003∼2005年度
  • 研究担当者:長谷川三喜、石田三佳、本田善文、市来秀之