クローラ型トラクタとフォレージハーベスタによる飼料イネ収穫技術

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要約

後ろ向きに着座できるクローラ型トラクタに3条用の直装型フォレージハーベスタとボンネットワゴンを取付け、飼料イネをダイレクト細断収穫する技術である。軟弱な圃場条件でも大型トラクタによる高能率収穫ができ、収穫物はスタックサイロ等で調製する。

  • キーワード:飼料イネ、作業、収穫機、トラクタ、スタックサイロ
  • 担当:畜産草地研・飼料生産管理部・栽培工学研究室
  • 連絡先:電話0287-37-7801、電子メールsawa@affrc.go.jp
  • 区分:畜産草地
  • 分類:技術・参考

背景・ねらい

飼料イネの収穫では専用機が市販され立毛中の飼料イネを直接刈取り、梱包する技術(ダイレクト収穫)と、従来の飼料作用機械を用い た予乾収穫技術が普及している。特に、飼料作用機械を用いた体系は機械の汎用利用が可能で高能率な作業が可能であるが、刈取り後の予乾に2∼3日かかるこ とと、水田のため大型トラクタ作業が難しい場面が多くみられ、専用機のようにダイレクト収穫する飼料作用機械を用いた体系が要望された。そこで、比較的軟 弱な土壌条件でも作業が可能で、操作性が良く、しかも高能率な飼料作用作業機を用いた飼料イネのダイレクト収穫可能な作業システムを提供する。

成果の内容・特徴

  • 作業機の構成は、収穫部(フォレージハーベスタ:FH)、動力部(後ろ向きに着座できるクローラ型トラクタ)、荷受部(ボンネットワゴン)からなる(図1)。FHは、リバース専用3条用とし、市販機のリバースとサイド作業可能なベース機を直装型に改造したものである。刈取り装置は、N社のリールと往復動刃を持つ牧草用ヘッダを用いるため、駆動部、FHの取付け部などを改造している。
  • リバース走行トラクタは、座席の向きを回転させることと、操作レバーの角度を調整することで容易に後ろ向き走行に変更可能であり、リバース走行の変更に要する時間は、1分弱である。
  • 飼料イネは、FHのシリンダで細断され、ボンネットワゴンへ直接吹込まれる。これにより、収穫作業は1人作業が可能であり、運搬車への排出は油圧によるダンプ機構により2分弱でできる。
  • 枕地作業と運搬車の待受け時間を除いた作業能率は23.1分/10aである(刈幅6条、走行速度0.7m/s)。
  • 収穫された飼料イネは、トラックへの荷下ろし時の損失を除けば1%以下の損失であり、スタックサイロ(図2)や定置式の細断型ロールベーラで梱包、調製することができる。
  • 飼料イネのFHによるわらの切断長は、重量比で2cm以下が42%、2∼5cmが11%、5cm以上が46.3%で、細断されていることにより、高品質サイレージ調製が可能である。また、穂の細断状態は、穂の原形の状態が9%(図3)、籾に分離された状態で78%、籾への損傷状態が13%で、籾への損傷も期待できる。

成果の活用面・留意点

  • このシステムは、畜産農家所有機械での飼料イネの収穫と飼料作との汎用利用が可能となる。
  • 収穫作業を能率的に行うには、50a区画以上の広さが必要である。

具体的データ

図1 リバース走行クローラ型トラクタによるFHによるダイレクト収穫作業

 

図2 スタックサイロによるサイレージ調製

 

図3 穂の細断状態
 FHの設定切断長9mm

 

その他

  • 研究課題名:未消化籾低減化のための収穫技術の開発
  • 予算区分:ブラニチ3系
  • 研究期間:2003∼2005年度
  • 研究担当者:澤村 篤、住田憲俊、井上秀彦
  • 発表論文等:住田ら(2005)畜産草地研究所技術レポート(5):1-24