メタン発酵処理が雑草種子の死滅率に及ぼす影響

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要約

35℃の発酵処理では、30日の滞留日数でも生存したままの雑草種子が残る。55℃では、2日の滞留で大半の雑草種子が死滅するが、アレチウリ種子を含む場合は35日以上の滞留が必要である。

  • キーワード:メタン消化液、雑草種子、死滅率、アレチウリ、草地生産管理
  • 担当:畜産草地研・放牧管理部・草地管理研究室
  • 連絡先:電話0287-37-7808、電子メールnishida@affrc.go.jp
  • 区分:畜産草地
  • 分類:技術・参考

背景・ねらい

家畜排泄物のメタン発酵処理技術は、エネルギー源となるメタンを発生させるだけでなく、残渣である消化液も有機質肥料として耕種利 用が可能である。しかし、家畜排泄物中には雑草種子が混入しているため発酵処理中に雑草種子を死滅させることが必要である。 メタン発酵過程で雑草種子の 生存に影響を及ぼす主な要因としては温度およびアンモニア濃度およびそれらへの曝露時間がある。本実験では、それらの要因がメタン発酵処理液中の雑草種子 の死滅率に及ぼす影響を調査した。

成果の内容・特徴

  • 実験用メタン発酵槽(6リットル、牛スラリー)に滞留させた雑草種子は滞留期間と共に死滅率が増加する。しかし35℃では、30日の滞留でも生存種子が残る。(表1a))。
  • 55℃では2日間の滞留で大半の雑草種子が死滅するが、アレチウリ種子は高い生存率を保つ(表1b))。
  • アレチウリ種子の温度に対する耐性は非常に高く、メタン消化液の雑草リスクを考える際にはアレチウリ種子を指標にすればよい(表1a, b))。
  • アンモニア濃度を変えた実験用メタン発酵槽に滞留させたアレチウリ種子の死滅率はアンモニア濃度の影響をうけない(図1a, b))。
  • アレチウリ種子の死滅率は35℃の発酵処理では45日間の滞留でも80%未満であるが55℃では35日の滞留でほぼ全滅する(図1a, b))。

成果の活用面・留意点

  • メタン発酵プラント設置の際に参考資料となる。
  • 本実験では、家畜の消化作用は考慮していない。
  • メヒシバなどではアンモニアによる発芽率の低下が認められている。
  • 発酵原料中に雑草種子が多く含まれており、プラントの性質上雑草種子の死滅が見込めない場合は別途加熱処理を行うなど対策が必要となる。

具体的データ

表1 メタン発酵液中の雑草種子の死滅率(%)に及ぼす温度および滞留日数の影響

 

図1 アレチウリ種子のメタン発酵液中滞留日数と死滅率(%)との関係

 

その他

  • 研究課題名:メタン消化液の耕種利用における雑草種子のリスク評価
  • 予算区分:バイオリサイクル
  • 研究期間:2003~2004年度
  • 研究担当者:西田智子、北川美弥、山本嘉人、山澤 哲(鹿島技研)、多田羅昌浩(鹿島技研)