小面積でも集約放牧で購入飼料からの蛋白質供給量を節減できる

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要約

集約放牧の導入により高蛋白質の放牧草が供給されることから、草地面積10a/頭程度の時間制限放牧でも平均的乳量水準の乳牛群であれば、購入飼料から供給される蛋白質量を2割程度節減できる。

  • キーワード:放牧、乳用牛、集約放牧、粗蛋白質
  • 担当:畜産草地研・放牧管理部・放牧飼養研究室
  • 連絡先:電話0287-37-7809、電子メールmato@affrc.go.jp
  • 区分:畜産草地
  • 分類:技術・参考

背景・ねらい

酪農への放牧の導入は土地の確保の難しさや、乳質の低下の懸念等により進んでいなかったが、近年、北海道で低コストが注目され導入 が増えてきている。放牧草は貯蔵草やコーンサイレージに比較して粗蛋白質(CP)含有率が高いので、十分な土地の確保の難しい地域においても、時間制限の 集約放牧を導入することにより購入飼料、特に蛋白質飼料の節減が期待できる。そこで、小面積を利用した放牧による購入飼料の節減効果を明らかにする。

成果の内容・特徴

  • ペレニアルライグラスとシロクローバの混播草地で、割当草量(採食量)を2段階(多い:放牧 H、少ない:放牧 L)に設定した搾乳牛の時間制限の集約放牧試験を春季と夏季に実施し、併給飼料の給与は日本飼養標準〈乳牛〉に従って設計した(図1)。なお、放牧は朝搾乳後から午後までの4∼5時間とした。
    日乳量約25kgの牛では放牧草を3∼4kgDMの摂取で、TDNの1∼2割、CPの2∼3割を摂取することができる。これにより放牧しない場合に比べ、TDNで1割、CPで2割近く購入飼料を節減でき(図1)、乳量、乳脂率の低下は見られない。
  • 放牧草地10aから得られる栄養の割合を放牧草生産量から試算すると、春の高生産の時期には、日乳量30kgの牛でもTDNの33%、CPの43%が確保できる(表1)。これにより、乳量8000kgで春分娩した牛を4月から10月まで放牧した場合、放牧草地から年間必要な蛋白質量の2割程度を自給できる。
  • 採草地の一部を1頭当たり6∼10aを放牧利用(時間制限)に転換した酪農家の調査からは、濃厚飼料のうち蛋白質補 給用のサプリメントのCP含有率を46%から26%に変更し、放牧期間中の濃厚飼料の日給与量も14から10.3kgに約25%削減したことで、乳飼比が 22.3から16.6と大きく改善することが認められる(表2)。

成果の活用面・留意点

  • 経営面積の少ない酪農においても放牧の導入を検討する資料となる。
  • 牧草の栄養価を高く維持する集約放牧(短期輪換、短草利用)管理条件で、北関東で得た試験成績である。
  • 時間制限放牧等により過放牧を防止し、草地管理を適正に行う。

具体的データ

図1 搾乳牛の放牧試験の飼料構成と栄養配分

 

表1 10aの放牧草地から供給できる栄養量の試算結果

 

表2 A牧場における放牧導入前後の乳生産と濃厚飼料給与の変化

 

その他

  • 研究課題名:小面積草地を利用した搾乳牛放牧技術の開発
  • 予算区分:ブラニチ3系
  • 研究期間:2003∼2005年度
  • 研究担当者:的場和弘、栂村恭子、大槻和夫、安藤 哲