体内成熟卵の利用による核移植胚の体外発生率の向上

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要約

ウシ核移植のレシピエント卵子として、経腟採卵により採取した体内成熟卵を用いると、体外成熟卵を用いた時に比べて、高い体外発生率が得られる。

  • キーワード:ウシ、家畜繁殖、核移植、体内成熟、経腟採卵
  • 担当:畜産草地研・家畜育種繁殖部・生殖細胞研究室
  • 連絡先:電話029-838-7382、電子メールakagi@affrc.go.jp
  • 区分:畜産草地
  • 分類:科学・参考

背景・ねらい

体細胞核移植技術は優良家畜の増殖に貢献する技術として期待されているが、クローン個体発生率は10%前後の低い値である。この一 因として体細胞核の初期化が不完全であるためと考えられている。体細胞核の初期化はレシピエント卵子内で起こるため、レシピエント卵子の品質を改善するこ とは核移植胚発生能の向上に繋がると考えられる。本研究は、胚発生能の向上を目指して核移植のレシピエント卵子として体内成熟卵の使用を検討する。

成果の内容・特徴

  • 黒毛和種雌牛に図1に示すプロトコールでホルモン処理し、経腟採卵を実施することで体内成熟卵の採取が可能である(図2、表1)。ホルモン処理は卵胞刺激ホルモンの漸減投与と性腺刺激ホルモン放出ホルモン製剤による排卵誘起を基本とする。
  • 採取直後の卵丘細胞をドナー細胞とした核移植胚の体外発生率は、レシピエント卵子として食肉処理場由来の体外成熟卵を用いた場合に比べ、体内成熟卵を用いることで改善される(図3)。

成果の活用面・留意点

  • 体内成熟卵は核移植のレシピエントとしてだけでなく、体外受精にも利用できうる。
  • 体内成熟卵を用いても核移植胚移植後の流死産の可能性は考慮する必要がある。

具体的データ

図1 体内成熟卵採取プロトコール

 

図2 経腟採卵により採取した体内成熟卵

 

表1 体内成熟卵の回収成績

 

図3 体外あるいは体内成熟卵を用いて作出した核移植胚の胚盤胞発生率

 

その他

  • 研究課題名:体細胞核移植によるクローン牛作出技術の確立
  • 予算区分:体細胞クローン
  • 研究期間:2002∼2005年度
  • 研究担当者:赤木悟史、高橋清也、渡辺伸也