酸化ストレスは骨格筋タンパク質の酸化と分解を促進する

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要約

酸化ストレスは鶏培養筋肉細胞においてタンパク質の酸化ならびに分解を促進する。また、抗酸化機能を有するアミノ酸であるシステインは酸化ストレス誘発性の鶏培養筋肉細胞のタンパク質の酸化ならびに分解を抑制する。

  • キーワード:家禽、骨格筋、家畜栄養、酸化ストレス、タンパク質分解
  • 担当:畜産草地研・家畜生理栄養部・栄養素機能研究室
  • 連絡先:電話029-838-8657、電子メールkaznaka@affrc.go.jp
  • 区分:畜産草地
  • 分類:科学・参考

背景・ねらい

畜産における最大の目標は動物タンパク質生産であるが、正味のタンパク質生産量はタンパク質の合成量と分解量の差である。タンパク 質合成については多くの研究がなされ、検討されてきたが分解については不明な点が多い。タンパク質分解は様々なストレスにより亢進することが知られている が、特に生体内酸化ストレスの影響が注目されている。酸化ストレスは骨格筋のタンパク質分解を促進し、その結果筋肉が萎縮し、家畜生産、特に食肉生産の低 下につながると考えられる。
そこで、鶏培養筋肉細胞を用い、酸化ストレスの骨格筋タンパク質分解に対する影響を明らかにし、また、抗酸化物質(栄養素)により酸化ストレスを軽減することを目的とする。

成果の内容・特徴

  • 13日齢鶏胚から大腿筋を摘出し、筋芽細胞を調整する。筋管形成が90%以上に達した時点で(図1)、過酸化水素水(H2O2、0.5および1 mM)を含む無血清培地で1時間培養し、その後、新しい培地に交換し6および24時間培養する。タンパク質の酸化の指標としてタンパク質のカルボニル含量、タンパク質分解の指標として培地への3-メチルヒスチジン放出量を測定する。
  • H2O2処理によりタンパク質のカルボニル含量が増加する(図2)。また、3-メチルヒスチジン放出量もH2O2処理により増加する(図2)。
  • システインはタンパク質のカルボニル含量を減少する。また、培地中への3-メチルヒスチジン放出量もシステインにより減少する(図3)。

成果の活用面・留意点

  • 酸化ストレスによる骨格筋タンパク質分解機構の解明に本研究で確立したモデルが活用できる。
  • 酸化ストレス誘発性の骨格筋タンパク質分解促進をシステインにより抑制できる可能性がある。

具体的データ

図1.鶏培養筋肉細胞

 

図2. タンパク質の酸化ならび分解に対する酸化ストレスの影響

 

図3. 酸化ストレス誘発性のタンパク質分解に対するシステインの影響

 

その他

  • 研究課題名:酸化ストレスによる骨格筋タンパク質分解機構の解明
  • 予算区分:形態・生理
  • 研究期間:2004∼2005年度
  • 研究担当者:中島一喜、山崎 信、阿部啓之
  • 発表論文等:
    1) Nakashima et al. (2004), Journal of Nutritional Science and Vitaminology 50, 45-49.
    2) Nakashima et al. (2004), Bioscience, Biotechnology, Biochemistry 68, 2326-2331.
    3) Nakashima et al. (2005), Bioscience, Biotechnology, Biochemistry 69, 623-627.