肉用牛にグルタチオン強化酵母を給与すると半膜様筋の剪断力価が低下する

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要約

グルタチオン含量を高めた乾燥酵母(グルタチオン強化酵母)粉末の黒毛和種への給与により、血液中の還元型グルタチオン濃度は増加しγ-GTP活性は減少する。また肉質に関しては半膜様筋の剪断力価が低下する

  • キーワード:肉用牛、飼料利用、酵母、グルタチオン
  • 担当:畜産草地研・家畜生産管理部・産肉技術研究室
  • 連絡先:電話0287-37-7811、電子メールskawak@affrc.go.jp
  • 区分:畜産草地
  • 分類:科学・参考

背景・ねらい

酵母は核酸、グルタチオン、βグルカンなどの機能性成分を多く含有し、またそれらの機能性成分含量を増加させた酵母製品も多数開発 されている。これらの成分は食肉の品質および肉用牛自身の生体機能を向上させることが示唆されるが、肉用牛をターゲットとした研究は非常に少ない。そこ で、抗酸化機能や肝臓保護作用を有するグルタチオンの含量を高めた乾燥酵母(グルタチオン強化酵母)粉末の黒毛和種への給与が、その産肉特性に与える影響 を検証する。

成果の内容・特徴

  • 20ヶ月齢の黒毛和種去勢牛(対照区4頭、酵母給与区4頭)に、グルタチオン強化酵母粉末(O社製、細胞数約3 x 1010/g、総グルタチオン含量1430 mg/100 g)を1日1頭当たり20 g給与すると、血液中の還元型グルタチオン濃度が有意に増加し、血清肝性酵素の一つであるγ-GTP活性が有意に減少する(図)。
  • 9ヶ月間の酵母給与試験において、日増体量、TDN摂取量、TDN要求率に対照区との有意差は観察されないが、酵母給与区で乾草摂取量が高い傾向がある(表1)。また枝肉成績では、酵母給与区においてバラの厚さが薄く、枝肉長が大きい傾向がある(表2)。
  • 酵母給与区において、半膜様筋の剪断力価が対照区と比較して有意に小さく、また胸最長筋の剪断力価も有意ではないものの小さい傾向がある(表3)。

成果の活用面・留意点

  • 機能性飼料添加物として酵母を肉用牛に用いる際の基礎データとして活用出来る。
  • 黒毛和種去勢牛における結果である。
  • 現段階ではグルタチオン強化酵母粉末の家畜への利用が試験研究目的のみに限定されている。

具体的データ

図 血液中の還元型グルタチオン濃度およびγ-GTP活性。

 

表1.増体成績。

 

表2.枝肉成績

 

表3.剪断力価(kg / cm2)。

 

その他

  • 研究課題名:肉用牛への酵母給与が産肉性等に及ぼす影響の解明
  • 予算区分:交付金
  • 研究期間:2004∼2005年度
  • 研究担当者:河上眞一、山田知哉、中西直人、仮屋喜弘、石崎 宏、安藤 貞(近中四農研)、粟野貴子(島根大)