イタリアンライグラスのアクチン遺伝子からの新規プロモーター単離

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要約

イタリアンライグラスのアクチン遺伝子から単離したプロモーターは、トールフェスクのカルス、葉、根において遺伝子を発現させる。また、本プロモーターは既存の構成的プロモーターと比較して、トールフェスクにおいて安定した発現を示す。

  • キーワード:イネ科牧草、プロモーター、形質転換、飼料作物育種
  • 担当:畜産草地研・飼料作物開発部・育種工学研究室
  • 連絡先:電話0287-37-7690、電子メールs.hiroko@affrc.go.jp
  • 区分:畜産草地、作物・生物工学
  • 分類:科学・参考

背景・ねらい

遺伝子組換え技術を用いて導入された遺伝子を安定的に発現させるためには、遺伝子の発現を調節するプロモーターの選択が重要であ る。また、飼料作物独自のプロモーターが単離できれば、既存特許の回避、宿主内での安定した発現、PAに配慮した組換え体を作出できる。そこで、イタリア ンライグラスからアクチンプロモーターを単離し、レポーター遺伝子(GUS)と連結して導入したイネ科飼料作物組換え体におけるプロモーターの発現力を検 討する。

成果の内容・特徴

  • 本プロモーターは、イタリアンライグラスのアクチン遺伝子群の中から器官ごとに作製されたcDNAライブラリー(Ikeda et al. 2004)中に存在するアクチン遺伝子(LmAct1)の上流域をプロモーター部位として単離したものである(図1)。
  • LmAct1プロモーターと連結したGUS遺伝子を導入したトールフェスク組換え体は、カルス、葉、根において遺伝子発現が認められ、構成的な発現を示し、組織、器官特異性はない(表1、図2)。
  • LmAct1プロモーター、構成的プロモーターとして用いられるカリフラワーモザイクウイルス 35S(CaMV35S)及びイネアクチン(RiceAct1)プロモーターのGUS遺伝子の発現力は、イネにおいてはいずれも強い。一方、トールフェス クではLmAct1プロモーターは均一で強い発現力を示すが、CaMV35SプロモーターとRiceAct1プロモーターの発現力は弱く、均一ではない(図3)。

成果の活用面・留意点

  • フェスク類、ライグラス類の組換え体を作出する時に、安定した発現を示す構成的プロモーターとして利用できる。
  • 本プロモーター配列は、既存特許に含まれるアクチンプロモーター配列との相同性が極めて低い。

具体的データ

図1 イタリアンライグラスLmAct1遺伝子の構造とコピー数

 

表1 LmAct1プロモータを導入したトールフェスクの形質転換効率

 

図2 LmAct1プロモーター連結GUS遺伝子を導入したトールフェスク 組換え体におけるGUS遺伝子発現

 

図3 カルスにおける他種プロモーターとのGUS遺伝子発現の比較

 

その他

  • 研究課題名:イネ科飼料作物由来の高発現プロモーターの単離及び機能解析
  • 課題ID:12-05-02-02-20-05
  • 予算区分:交付金
  • 研究期間:2002~2005年度
  • 研究担当者:佐藤広子、高溝 正、間野吉郎、藤森雅博、清多佳子