日本在来フリント種が持つトウモロコシ黒穂病抵抗性に関与するQTL
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要約
日本在来フリント種由来自殖系統を用いた遺伝解析集団において、第1染色体短碗上に自然発病下と接種検定下に共通するQTLが存在する。近傍のDNAマーカーを選抜マーカーの開発に利用できる。
- キーワード:トウモロコシ、黒穂病、QTL、抵抗性、飼料作物育種
- 担当:畜産草地研・飼料作物開発部・ヘテロシス研究室
- 連絡先:電話0287-37-7551、電子メールkika@affrc.go.jp
- 区分:畜産草地
- 分類:科学・参考
背景・ねらい
黒穂病菌Ustilago maydis
によるトウモロコシ黒穂病は、古くから知られるトウモロコシの重要病害の一つである。その防除対策には抵抗性育種が最も有効な方法として用いられてきた
が,本病については発病に年次間差が大きく、環境に大きく左右されるため、そのことが抵抗性育種の進展を困難にしてきた。そこで本研究では、年次間差の影
響を少なくするため、5年間の長期にわたる自然発病下での黒穂病抵抗性の形質調査と、年次間相関の高い接種検定(接種時期4-6葉期、接種回数2回)を用
いての2年間の形質評価を行い、黒穂病抵抗性に関与している遺伝子の連鎖解析を試みることで、黒穂病抵抗性遺伝子に連鎖するDNAマーカーの開発を目標とする。
成果の内容・特徴
- 日本在来フリント由来の自殖系統Na50と、同じく日本在来フリント由来の自殖系統Na4との交配F1に由来する組換え近交系(RILs)の自然発病下と、接種検定下のゴール形成率は連続変異を示し、解析集団の黒穂病抵抗性は量的形質である(図1)。
- 接種検定下での茎葉の黒穂病ゴール形成に関与するQTL領域は少なくとも1つ存在し、
黒穂病の茎葉ゴール形成率を5.19%低下させる(図2)。
- 接種検定で検出したQTLは長年の自然発病下での試験でも同様に同定されており、この領域は安定して黒穂病抵抗性に大きく関与する。(図3、表1)。
- 接種検定下で検出されたQTLが、自然発病下でのQTLと一致する事は、今回用いた接種法により短年度での黒穂病抵抗性検定が行える事を示唆している。
成果の活用面・留意点
- QTL近傍のDNAマーカーは、黒穂病抵抗性の詳細な連鎖解析及び遺伝解析のための母材育成に利用できる。
- RILsによる解析のため優性効果は推定できない。
具体的データ




その他
- 研究課題名:人工接種法を用いたトウモロコシ黒穂病抵抗性遺伝子の探索
- 予算区分:交付金
- 研究期間:2004∼2005年度
- 研究担当者:黄川田智洋、村木正則(九州沖縄農研)、伊東栄作