水田里山放牧は低投入型で生産効率の高い放牧技術である
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要約
休耕田や耕作放棄地で小規模放牧を行うことにより、化石燃料由来の補助エネルギーの投入量を抑え、エネルギー利用効率の高い草地生産が行える。
- キーワード:エネルギー収支、計算シート、放牧、ウシ、エネルギー効率
- 担当:畜産草地研・草地生態部・植生生態研究室
- 連絡先:電話0287-37-7225、電子メールisis@affrc.go.jp
- 区分:畜産草地
- 分類:科学・参考
背景・ねらい
休耕田や耕作放棄地で小規模放牧を行うことにより(以降、水田里山放牧)、労力軽減や耕作地の維持が期待されているが、既存の土地
利用型畜産方式との比較データは少ない。本研究では、土地利用型畜産における生産管理に要するエネルギー収支を推定する計算シートを作成して水田里山放牧
調査地のエネルギー収支・物質動態を算出し、他の生産方式と比較することにより、水田里山放牧技術の有用性を評価する。
成果の内容・特徴
- 土地利用型畜産におけるエネルギー投入量とエネルギー産出量および数種のエネルギー効率を評価するエネルギー収支計算シートを開発した(図1)。これにより、施肥、播種、移動等の作業活動に要する化石燃料エネルギー、種子や肥料等の投入資材の製造・輸送に要するエネルギー、植物および家畜の生産エネルギーが算出される。
- 表1に示すように、水田里山放牧の収穫エネルギー(148.4GJ/ha/年)は既存の生産方式より低いが、光エネルギー利用効率(0.78%)や採食効率(89.6%)は他の生産方式より高くなる。
- 水田里山放牧における化石燃料由来の補助エネルギー投入量(17.7
GJ/ha/年)は他の生産方式より低く(表1)、産出/投入比は概ね6以上と他の生産方式と比較して高い(図2)。これらのことから水田里山放牧は低投入型の土地利用型畜産技術であるといえる。特に栽培ヒエを利用した放牧(N3とN4)は、飼料生産性と補助エネルギーの利用効率(産出/投入比=12)が高くなる(図2)。
成果の活用面・留意点
- 開発したエネルギー収支計算シートは生産現場での各種家畜生産方式における資源利用や生産効率を評価するために利用できる。希望者には配布する。
- 水田里山放牧を実施する時の基礎情報となるが、結果は長野県から岩手県までの地域データから得られた土地面積を基礎とした数値である。
- 表1のNP収支は草地への投入値から植物の吸収値を引いたもの(放牧家畜による被食を含む)で、放牧による糞尿の草地への投入は考慮しておらず参考値程度とする。
- 小規模で輪換放牧を主とする水田里山放牧は、広い草地面積を定置利用する従来型放牧より効率的な草地管理を行った結果、生産効率、エネルギー投入量の面で優れた結果が得られたと考えられる。
具体的データ



その他
- 研究課題名:エネルギー・物質動態調査に基づく休耕田放牧技術の評価
- 予算区分:ブラニチ3系
- 研究期間:2003∼2005年度
- 研究担当者:板野志郎、堤道生、坂上清一、中神弘詞