ガンマ分布に基づく草量推定法の実用化

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要約

提案する2つの草量推定法はガンマ分布に基づく草量推定法の改良法である。1つは目視による方法、もう1つは草量計を用いる方法であり、ともに草量判定が簡便である点でより実用的である。

  • キーワード:草地管理、草量計、草量推定、牧草、野草
  • 担当:畜産草地研・草地生態部・植生生態研究室
  • 連絡先:電話0287-37-7225、電子メールmcot@affrc.go.jp
  • 区分:畜産草地
  • 分類:科学・参考

背景・ねらい

Shiyomi (1991) は、草量の頻度分布がガンマ分布に従うことを利用して、目視による草量推定法を提案した。この方法は非破壊的であるとともに予備調査が不要という利点があ る一方、草量判定の難しさ、および積分方程式の解を求める必要があるという難点があり、広く実用されるには至っていない。そこで、草量判定とデータ解析を 簡便にし、一般に利用できるようにする。

成果の内容・特徴

  • 提案する2つの方法はいずれも次のガンマ分布の仮定に基づく(図1)。

    ここで、 w は任意の枠あたりの草量、f (w)は密度関数、μは枠あたりの平均草量である。p は草量の空間的不均一性のパラメータ、Γ(p)はガンマ関数を示す。
  • 改良した目視法の手順は次の通りである(図2a参照):(1) 草地に基準草量(C1)を設定する;(2) 任意の数の枠を設置し、枠内の草量がそれより多いか少ないか目視で判断する;(3) 刈り取りによりこれら2つの基準草量を測定する;(4) ここまでの手順を(基準草量をC2に変えて)もう一度繰り返す;(5) 式1のC1C2n1n2n3n4に取得データを代入し、μについて解くことにより枠あたりの平均草量が推定できる。従来法では2つの基準草量から枠を3分類するのに対し、本推定法は2分類とした点で目視による草量判定がより容易である。
  • 草量の判定を客観的にし、また基準草量の決定を容易に行うには、草量計などの機器を用いた次の方法も考えられる(図2b参照):(1) 草地に任意の数N個の枠を設置し、草量計(もしくはライジングプレートメーターなどの非破壊的草量測定機器)を用いて枠内を測定する;(2) 草量計の測定値を基に基準草量、Q1、Q2をN1≒N2≒N3となるように決定し、刈り取りにより基準草量を測定する;(3) 枠を、草量計の測定値を基に、Q1 g未満、Q1 g 以上Q2 g 未満、Q2 g 以上に分類する;(4) 式2のQ1、Q2、N、N1、N2に取得データを代入し、μについて解くことにより枠あたりの平均草量が推定できる。
  • 式1と2を表計算ソフトMicrosoft Excelで解くための計算シートを作成した。

成果の活用面・留意点

  • 簡便に草量を推定できることから、草地の管理およびそれに関する研究などで活用できる。
  • 本推定法は、労力の面から少数の枠での刈り取りによる推定法よりも精度が高い。
  • 調査枠をランダムに設置する場合、その数は草地面積に関わらず50以上必要である。
  • 希望者にはより詳細なマニュアルおよび計算シートを配布する。

具体的データ

図1.草量の頻度分布へのガンマ分布あてはめの例。棒は実測値。実線はガンマ分布から推定された理論値。

 

図2.(a) 改良した目視法の概念図。

 

式1.C1、C2は基準草量、n1はC1より草量の少ない枠の数、n2はC1より草量の多い枠の数、n3はC2より草量の少ない枠の数、n4はC2より草量の多い枠の数を示す。

 

式2.Q1、Q2は基準草量、N1はQ1より草量の少ない枠の数、N2はQ1より草量が多くQ2より草量の少ない枠の数を示す。Nは調査枠の総数。

 

その他

  • 研究課題名:放牧を導入した草地の植生構造評価法の開発
  • 予算区分:交付金
  • 研究期間:2004∼2005年度
  • 研究担当者:堤 道生、板野志郎
  • 発表論文等:
    1) Tsutsumi and Itano (2005) Grassland Science 51 : 275-279.
    2) 堤・板野 (2005) 日草誌 51 : 205-208.