処理・利用経路別の家畜ふん尿由来NPK発生量の推定
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要約
バイオマス利用計画策定に利用するため、既存の統計情報等を用いて処理・利用経路別の家畜ふん尿とそのNPK成分の発生量を推定する手法を開発した。発生量は統計値やパラメータのデータベースと表計算ソフトのマクロ言語により容易に計算できる。
- キーワード:畜産環境、家畜ふん尿、処理・利用経路別発生量、情報処理
- 担当:畜産草地研・草地生態部・草地資源評価研究室
- 連絡先:電話0287-37-7246、電子メールkohyama@affrc.go.jp
- 区分:畜産草地
- 分類:行政・参考
背景・ねらい
家畜ふん尿の量は畜種、頭数によりほぼ決定されるが、畜舎の形態やふん尿の処理方法によって発生するふん尿の形態が異なり利用方法
も異なる。すなわち、尿やスラリーのほとんどは経営内農地に還元利用され、堆肥は経営内農地の他に耕種農家でも利用されるのが一般的である。したがって、
経営耕地面積と経営内農地で処理すべき量との関係、耕種農家における利用可能量と流通利用(販売・交換など)される量の関係を明らかにすることで適切なバ
イオマス循環を行うことができる。そのため、既存の統計情報などを利用した処理・利用経路別の家畜ふん尿由来の窒素(N)、リン(P)、カリウム(K)発
生量の推定を行い、量的な関係を明らかにする。
成果の内容・特徴
- 処理・利用経路別の家畜ふん尿由来N、P、K発生量の推定手順は以下のとおりである(図1、表1)。
(1)飼料、TDN(可消化養分総量)およびN、P、Kの摂取量を飼料利用量、飼料生産量、日本標準飼料成分表から推定し、家畜排せつ物量推定プログラム
からふん、尿発生原単位を求め頭数を乗じてふん尿発生量(全量、N、P、K)を算出する。(2)「畜産部門調査結果」からふん尿分離割合とふん尿処理形態
別(堆肥(処理施設)、堆肥(堆積)、乾燥ふん、生ふん、尿、スラリー、その他)の処理別割合を求め、(1)で算出した発生量を乗じて処理別重量を算出す
る。(3)「取組状況調査報告書」から利用経路別(経営耕地還元、販売・交換等、その他)の割合を求め、(2)で算出した値を乗じて処理・利用経路別量と
する。この際に、Nについては処理過程で揮散する割合も加える。
- これらの値は都道府県別の統計値やパラメータのデータベースと表計算ソフトのマクロ言語により自動的に計算でき、地
域の実態に合わせてパラメータ等を変更することが可能である。算出された値は、都道府県別、畜種別、成分別(全量、N、P、K)、処理別、利用経路別の
データファイルとして保存される(表2)。
- 処理・利用経路別、成分別に推定することにより従来ほとんど行われていなかった量的な検証が可能になる。統計値で得
られた堆肥量と平均的な成分含有率に基づいて計算したN、P、K量と、本手法で算出された堆肥のN、P、K量を比較すると、牛(乳牛、肉用牛)ではほぼ同
様の値が得られた。ただし、肉用牛で本手法のP量がやや低かった。また、豚、鶏ではふん尿発生量はほぼ同等であったが、N、P、K量は本手法で低かった。
成果の活用面・留意点
- 地域レベルの処理別の家畜ふん尿量と成分量がわかるので、農地における利用可能量と比較することで、畜産由来バイオマスの適切な利用計画の策定等の参考となる。
- 用いた統計資料は畜産環境3法施行以前のものであるため、その後処理別割合が変化している可能性がある。
具体的データ



その他
- 研究課題名:利用経路別の家畜ふん尿由来バイオマス量推定モデルの開発
- 予算区分:バイオリサイクル
- 研究期間:2003∼2005年度
- 研究担当者:神山和則、佐々木寛幸、松浦庄司、寳示戸雅之