堆肥化中に発生するアンモニアを効率的に回収する吸引通気式堆肥化システム

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要約

家畜ふんの堆肥化過程において、堆肥原料の底部から吸引して通気する方法。圧送通気と同様に好気発酵が促進され、堆積原料表面からのアンモニア揮散を低減し、排気中の高濃度アンモニアを簡易スクラバで肥料として回収できる。

  • キーワード:畜産環境、家畜ふん尿、堆肥、吸引通気、アンモニア、臭気
  • 担当:畜産草地研・資源化システム研究チーム
  • 連絡先:電話0287-37-7814、電子メールwww-nilgs@naro.affrc.go.jp
  • 区分:畜産草地、共通基盤・バイオマス研究
  • 分類:技術・普及

背景・ねらい

家畜ふん尿の堆肥化処理では、好気発酵が促進されるとアンモニアガスが大量に発生し、堆肥原料の表面からそのまま放出される場合が多い。これを脱臭するためには、施設のヘッドスペース容積の5~10倍の換気量を吸引して脱臭装置に搬送する必要があり、規模が大きくなる程アンモニアの回収が困難になる。そこで、原料内部のアンモニアガスを底部から効率的に吸引しながら通気を促進する吸引通気方式を検討し、堆肥化過程におけるアンモニアガス揮散を抑制し、さらに窒素肥料として回収・資源化する方法を確立する。

成果の内容・特徴

  • 吸引通気方式は、①堆肥発酵槽、②吸引通気系(吸引口、送風機等)、③アンモニア回収用簡易スクラバ(H17年度畜産草地、共通基盤研究成果情報参照)、④電装・制御系から構成され、②の通気口を耐食仕様の亀甲網や木質チップ等で覆うことで、通気口の目詰まりを2~6ヶ月間防止できる。送風機は、ターボファン、渦流送風機(リングブロワ)のどちらでも適用できるが、耐熱(最大70℃)・耐腐食仕様で、送風機本体とモータ室が分離された構造を採用する(図1)。
  • オガクズと戻し堆肥を副資材にした乳牛ふんを原料とし、34m3(幅7m×長さ3m×堆積高さ1.6m)の発酵槽4槽からなる堆肥化施設で、1週間毎に順次隣の槽へ切り返して4週間にわたり堆肥化処理する場合、吸引通気方式と圧送通気方式を比較しても、発酵温度や有機物分解率等に大きな差は認められない(図2)。
  • アンモニア発生が盛んな発酵開始1~2週目では、吸引通気方式は圧送通気方式と比較して、原料表面でのアンモニアガス濃度が1/10~1/100に低減される。また、圧送通気方式では、原料表面から初期全窒素量の9.4%がアンモニアガスとして揮散するが、吸引通気方式では、簡易スクラバやドレイントラップでほぼ同量が回収される(表1)。
  • 通気のための消費電力量は、吸引通気と圧送通気と同程度で(図3)、4週間の堆肥化処理では4.8kWh/t(1kWhあたり10.5円とすれば50円/t)になる。また、吸引通気方式では1台の送風機で堆肥原料への通気とスクラバへのアンモニア搬送を兼ねているため、消費電力量は通気分と搬送分とをあわせて12.2kWh/t(128円/t)程度になる。

成果の活用面・留意点

  • 発生したドレインは発酵途中の堆肥原料にかけ戻し、スクラバで回収したアンモニアは肥料、または堆肥の成分調整剤として用いる。
  • 数ヶ月に一度、通気口を点検・清掃する必要があるので、堆肥クレーン方式やホイルローダ等による切り返し作業に適する。

具体的データ

図1 吸引通気方式の概略図

図2 吸引、圧送通気別の発酵温度と有機物分解率

図3 吸引、圧送通気別の消費電力量の比較

表1 吸引、圧送通気別の窒素収支

その他

  • 研究課題名:吸引通気式堆肥発酵処理技術の実証
  • 課題ID:214-t
  • 予算区分:バイオリサイクル
  • 研究期間:2002~2006年度
  • 研究担当者:阿部佳之、宮竹史仁、本田善文
  • 発表論文等:阿部ら(2003)農業施設 34(1):21-29