うどんこ病抵抗性「イタリアンライグラス中間母本農1号」
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要約
「イタリアンライグラス中間母本農1号」はイタリアンライグラスうどんこ病抵抗性が非常に強く、感受性品種に交雑すると抵抗性が向上し、その遺伝性は高い。「イタリアンライグラス中間母本農1号」はイタリアンライグラスの主力である2倍体の早生系統であり、うどんこ病抵抗性の育種母材として利用が期待できる。
背景・ねらい
イタリアンライグラスは我が国の採草用の冬作基幹草種として本州以南で広く栽培されており、飼料自給率向上の観点から、とりわけ、トウモロコシとの輪作体系に適合する早生品種の能力向上は重要である。既存の早生品種には、近年報告されたイタリアンライグラスうどんこ病(Erysiphe graminis、以下うどんこ病)に抵抗性であるものが見いだされていないため、抵抗性を付与する育種母材を開発することは有意義である。
成果の内容・特徴
- 「イタリアンライグラス中間母本農1号」(以下「農1号」)は、日当たり・風通しの悪い隔離圃場やガラス室といった、うどんこ病が発病しやすい条件で選抜を3回行うことにより育成された。うどんこ病抵抗性が非常に強く、既存の早生の2倍体品種と比較して発病程度が明らに低い(図1)。
- 「農1号」と感受性品種「ニオウダチ」を集団隔離交雑すると、その次代の発病程度(自然発病)は、「農1号」から採種した集団では抵抗性個体(発病程度1)の割合が高く、「ニオウダチ」から採種した次代でも「ニオウダチ」より抵抗性個体の割合が高まる(図2)。したがって、「農1号」のうどんこ病抵抗性は遺伝形質である。
- 「農1号」は2倍体であり、また、出穂始日は「ニオウダチ」および「はたあおば」とほぼ同程度で”早生”に属する(表1)。イタリアンライグラスの品種別シェアは早生品種が70%を占め、「農1号」は主力である早生系統の品種育成において、うどんこ病抵抗性を付与する育種母材として用いるのに好適である。
- 稈長、葉身長などの形態特性は、「ニオウダチ」および「はたあおば」と大きな差異はない(表1)。
- 収量性は「ニオウダチ」よりやや優れ、「はたあおば」よりやや劣る(表1)。
- 耐倒伏性は「ニオウダチ」および「はたあおば」より劣る(表1)。
- 採種性は「ニオウダチ」および「はたあおば」より劣る(表1)。
成果の活用面・留意点
- イタリアンライグラス品種育成において、うどんこ病抵抗性の育種母材として活用できる。
- 耐倒伏性および採種性が劣るので、「農1号」を利用した品種育成においては、これらを付与することが必要である。
具体的データ



その他
- 研究課題名:粗飼料自給率向上のための高TDN収量のとうもろこし、牧草等の品種育成
- 課題ID:212-c
- 予算区分:基盤研究費
- 研究期間:1998~2006年度
- 研究担当者:荒川明、矢萩久嗣、杉田紳一、小松敏憲、水野和彦、内山和宏