イネツトムシにより食害を受けた稲発酵粗飼料の飼料価値

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要約

イネツトムシにより食害を受けた稲発酵粗飼料は、収量の減少にともなって各化学成分の含有量、その消化率および栄養価も減少する。

  • キーワード:イネツトムシ、稲発酵粗飼料、ウシ、飼料価値、食害、飼料利用
  • 担当:畜産草地研・関東飼料イネ家畜飼養研究サブチーム
  • 連絡先:電話0287-37-7806、電子メールwww-nilgs@naro.affrc.go.jp
  • 区分:畜産草地、共通基盤・総合研究(飼料イネ)
  • 分類:技術・参考

背景・ねらい

現在、各地で生産が拡大している稲発酵粗飼料(イネWCS)の課題のひとつに、イチモンジセセリの幼虫(イネツトムシ)による食害が挙げられる。イネツトムシによる食害は葉色の濃いイネで多く発生することから、晩生品種の利用や多肥栽培を行うWCS用イネの栽培では、その被害に遭う可能性が高い。2004年に千葉県の営農試験地で実施したWCS用イネ栽培試験においてイネツトムシによる被害が発生し、その収量が著しく減少した。そこで、イネツトムシによる食害がイネWCSの化学成分、消化率および栄養価に及ぼす影響について、ホルスタイン種去勢牛を用いた消化試験を実施して評価する。

成果の内容・特徴

  • 食害を受けたWCS用イネの被害程度を示すものとして、黄熟期における1m2当たりの乾物重量が正常に生育したものは1734gであるのに対し、食害を受けたものは1075gと軽く、また穂部の乾物重量は正常に生育したものの約60%に留まる(表1、図1)。
  • 食害を受けたイネWCS(食害イネ)の化学成分のうち有機物含有率は、正常に生育したイネWCS(正常イネ)に比べて5.2ポイント低く、その他では細胞内容物と高消化性繊維の含有率が顕著に低い(表2)。
  • 食害イネの成分消化率は、粗タンパク質、粗脂肪を除いて、いずれも正常イネより低い傾向である(表3)。その結果、食害イネのTDN(可消化養分総量)は正常イネに比べて5.1ポイント低く、同様に可消化エネルギーや代謝エネルギーも低い傾向である(表3)。

成果の活用面・留意点

  • WCS用イネの栽培においてイネツトムシを防除することは、収量の確保のみならずイネWCSの栄養価の保持にも有効であることを示す。
  • 食害イネ、正常イネともに品種は「ホシアオバ」であり、コンバイン型専用収穫機で収穫、調製したものである。また、正常イネは別圃場で栽培したものであり、食害イネには尿素処理を施している。
  • イネツトムシによる食害の程度により、化学成分の含有量や栄養価は変動する可能性が高い。

具体的データ

表1 . 栽培成績の比較図1 . 食害イネの栽培状況

表2 . 化学成分の比較表3 . 消化率と栄養価の比較

その他

  • 研究課題名:関東地域における飼料イネの資源循環型生産・利用システムの確立
  • 課題ID:212-b
  • 予算区分:関東飼料イネ
  • 研究期間:2004~2008年度
  • 研究担当者:松山裕城、塩谷繁、細田謙次、額爾敦巴雅爾、石川哲也(中央農研)、石田元彦(中央農研)