耕作放棄地に造成したイタリアンライグラス草地における冬季放牧

※アーカイブの成果情報は、発表されてから年数が経っており、情報が古くなっております。
同一分野の研究については、なるべく新しい情報を検索ください。

要約

耕作放棄地にイタリアンライグラス草地を造成すると、黒毛和種繁殖牛を12月から4月までの150日間冬季放牧できる。放牧開始時草量が235.4kgDM/10aの場合の必要面積は62a/頭である。4月に放牧利用しない牧区では冬季野外給与用飼料を生産できる。

  • キーワード:耕作放棄地、イタリアンライグラス、肉用牛、冬季放牧、飼養管理・放牧
  • 担当:畜産草地研・山地畜産研究チーム
  • 連絡先:電話0267-32-2356、電子メールwww-nilgs@naro.affrc.go.jp
  • 区分:畜産草地
  • 分類:技術・参考

背景・ねらい

中山間地域において耕作放棄地に肉用繁殖牛を放牧する試みが増えてきており、既に西南日本では、この試みを推進するために、耕作放棄地における冬季放牧について検討されている。そこで、西南日本に比べて冷涼な東日本の中標高地における、耕作放棄地を用いた冬季放牧について検討する。

成果の内容・特徴

  • 図1に示す気象条件下の東日本中標高(標高800m)の耕作放棄地において、9月上旬にイタリアンライグラスを播種し、寒地型牧草の生育しない1月から3月まで黒毛和種繁殖牛を放牧すると、補助飼料無給与でも体重維持ができる(図2)。
  • 3月までの冬季放牧開始時の草量、利用率及び採食量(体重比)を表1の試験実測値(品種:エース、播種量6kg/10a、元肥量:5kgN/10a)から、それぞれ235.4kgDM/10a、91%及び2.2%/頭・日とすると、体重500kgの黒毛和種繁殖牛1頭を12月から3月までの120日放牧するのに、62aの草地が必要である。
  • 4月に、3月まで冬季放牧利用した草地の一部で2回目の放牧をすると、補助飼料無給与でも体重維持ができ(図2)、実測値の放牧開始時草量+再生量94.5kgDM/10a、利用率88%及び採食量(体重比)1.7%/頭・日から(表1)、30日間放牧するには1頭当たり62aの内31a必要であり、1回目と2回目を合わせて150日間冬季放牧ができる。
  • 2回目放牧に用いなかった牧区は、窒素で3kg/10aの追肥を行い、5月下旬に採草利用を行うことで、470kgDM/10aの草量が確保でき(表2)、収穫時から給与時までの損失率は52%なので、翌年の冬用の餌として230kgDM/10aの乾草またはサイレージを供給することができる。生産された飼料を給与し、体重の維持状態(図2)が保てる採食量は体重比で1.5%/頭・日(表2)なので、10aで30日間分の冬季野外給与用の飼料を生産できる。

成果の活用面・留意点

  • 本成果は12月から2月までの平均気温が-4~-1℃程度で、積雪があっても1週間以内に圃場から融けて無くなる気象条件の地域で活用できる。
  • 毎年造成する必要があるので、トラクタが利用できる平坦な圃場で活用する。
  • 繁殖牛は冬季放牧用の牧草を1日の必要量よりも多く食べる傾向にあるので、1つの牧区が広い場合には、3頭までであれば牧区内を20a程度のサイズに仕切る。

具体的データ

図1 試験地における月別気温

図2 冬季放牧及び冬季野外飼養時の供試牛の体重推移

表1 冬季放牧試験実績値表2 採草時収量および冬季野外飼養用飼料給与時の採食量

その他

  • 研究課題名:放牧技術の普及に向けた家畜生産技術の高度化と多様な飼料資源を活用した放牧技術の開発
  • 課題ID:212-d
  • 予算区分:基盤研究費
  • 研究期間:2003~2005年度
  • 研究担当者:進藤和政、手島茂樹、池田哲也、佐藤義和