放牧飼養下で生産される牛乳中の共役リノール酸濃度

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要約

放牧飼養で生産される牛乳の乳脂肪中の共役リノール酸濃度は、貯蔵飼料給与による舎飼い飼養に比べて高く、放牧期間中の平均濃度は飼料中に占める放牧草割合が高いほど高く、放牧草割合が30%の昼夜放牧では舎飼い時期の2倍以上になる。

  • キーワード:飼養管理・放牧、乳用牛、畜産物、放牧
  • 担当:畜産草地研・放牧管理研究チーム
  • 連絡先:電話0287-37-7809、電子メールwww-nilgs@naro.affrc.go.jp
  • 区分:畜産草地
  • 分類:技術・参考

背景・ねらい

生草を摂取する放牧では、貯蔵飼料を摂取する舎飼いに比べて、牛乳中には抗酸化作用や抗ガン作用のある共役リノール酸(CLA)濃度が高いとされ、牛乳の高付加価値化の方策として期待される。そこで、飼養条件の異なる酪農家のバルク牛乳を調査し、飼養条件がCLA(cis-9,trans-11CLA)濃度に及ぼす実態を明らかにする。

成果の内容・特徴

  • 調査した酪農家の状況は、舎飼い飼養が2例、放牧飼養は3例である。給与飼料から推定した放牧依存度(摂取飼料に占める放牧草の乾物重割合)は、時間制限放牧では12%と17%、昼夜放牧で27%である(表1)。放牧期間は北海道の酪農家で4月下旬~10月中・下旬、栃木県の酪農家では4月初旬~11月初旬および12月上旬~1月初旬までである。
  • 舎飼い飼養の乳脂肪中CLA濃度は0.25~0.60%の範囲にあり、冬季の11、12月に低い傾向がある(図1)。舎飼い飼養のAの事例では、4月~7月までのCLA濃度は他の時期と比べて高く、時間制限放牧の牛乳と同程度である。
  • 春から秋までの放牧期間中のCLA濃度は、昼夜放牧では0.83~1.28%の範囲にあり、7月の最高値には舎飼い時期の3倍の濃度となる。時間制限放牧では、0.47~0.71%である。昼夜放牧、時間制限放牧のいずれも、舎飼い時期のCLA濃度に比べて、放牧期間中に上昇が認められる。(図1)。
  • 放牧期間中の平均CLA濃度は放牧依存度が高いほど高くなり、昼夜放牧の牛乳では、舎飼い飼養の牛乳の2倍以上の濃度を示す(図2)。

成果の活用面・留意点

  • 共役リノール酸に着目した牛乳生産のための情報として活用できる。
  • 放牧期間中や舎飼い飼養での共役リノール酸濃度変化に影響する要因については検討中である。

具体的データ

表1 牛乳を採取した酪農経営体における搾乳牛の飼養条件

図1 飼養条件の異なる酪農経営での牛乳中の共役リノール酸濃度の季節変化

図2 調査農家における放牧依存度と牛乳中の共役リノール酸濃度の関係

その他

  • 研究課題名:地域条件を活かした健全な家畜飼養のための放牧技術の開発
  • 課題ID:212-d
  • 予算区分:委託プロ(ブラニチ)、基盤研究費
  • 研究期間:2004~2010年度
  • 研究担当者:栂村恭子、田中礼央(雪印乳業)、椎木靖彦(雪印乳業)、佐々木正弘(雪印乳業)、的場和弘