作業工程の削減と作期分散が可能な温暖地向け不耕起-夏秋二毛作体系

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要約

早春にトウモロコシ極早生品種を秋作エンバク跡地に不耕起播種することにより作業工程数の少ない温暖地向けの夏秋二毛作体系が実現できる。この作付体系は慣行栽培(耕起-夏作トウモロコシ+冬作体系)と同水準の収量が得られるうえに、夏冬二毛作と組み合わせることにより作期分散が可能となる。

  • キーワード:トウモロコシ不耕起播種、秋作エンバク、除草剤、栽培・作付体系、飼料作物栽培・調製・評価
  • 担当:畜産草地研・飼料作生産性向上研究チーム
  • 連絡先:電話0287-37-7802、電子メールwww-nilgs@naro.affrc.go.jp
  • 区分:畜産草地
  • 分類:技術・参考

背景・ねらい

近年の畜産経営では、1戸当たりの飼養頭数増加と、担い手の高齢化により労働力が不足しつつあり、また関東北部を中心とする飼料作の二毛作地帯では、冬作草種・品種の選択によっては、春先の作付け転換期に収穫調製・トウモロコシ播種作業の重複から繁忙期が形成される。そのため作業の中核である夏作トウモロコシ播種については省力化や労働平準化の実現が課題となっている。そこで将来的なコントラクタ等による大規模作付け向けの省力化技術として注目されている不耕起播種技術を取り上げ、現在市販されている不耕起播種機の活用が可能な作付け体系を明らかにするとともに、その導入効果等について明らかにする。

成果の内容・特徴

  • 現在市販のトウモロコシ用不耕起播種機を温暖地二毛作地帯において活用する場合、秋作エンバク跡地ならば安定的な播種が可能である(図1)。秋作エンバク収穫後、冬期間はそのまま経過させ、不耕起播種の阻害要因となる残稈・残根が枯死した後にトウモロコシ播種作業を行うために冬作跡と比較して播種精度が向上し、定着個体は慣行耕起区と同水準以上で確保可能である。
  • 不耕起による夏作トウモロコシ+秋作エンバク体系(以下、不耕起-夏秋二毛作体系)におけるトウモロコシ収量は、同じ相対熟度の品種(‘ディアHT88’)を使用した場合、慣行栽培(耕起-夏作トウモロコシ+冬作体系)と同水準の収量(約1200kg/10a)が得られるが、慣行栽培でより熟期の遅い品種を用いた場合に比較してやや低い水準である(図1)。
  • この不耕起-夏秋二毛作では、9月第1週に播種した極早生エンバクを年内に収穫(12月上~中旬の降雪前まで)しているため、トウモロコシの播種適温に達した時点(関東北部4月下旬)で直ちに作業を開始でき、夏冬二毛作体系との間で作期分散が可能となる。また播種時における耕耘等の作業を省略可能なため、春先の作業工程を大幅に削減できる(図2)。また、極早生トウモロコシを作付けし、8月上~中旬に収穫を行うことで、秋作エンバク播種の期間として3~4週間程度を確保できるため、二毛作の維持に支障をきたさない(図2)。
  • 播種時に非選択性除草剤(グリホサートアンモニウム塩液剤:商品名ラウンドアップハイロード)と土壌処理剤(アトラジン水和剤)との混用散布を行うことにより、確実な雑草防除が可能となり、十分な乾物収量が確保できる(表1、図3)。

成果の活用面・留意点

  • 本作付けは、温暖地でのコントラクタ等による大規模作付への対応を念頭に置き、作業工程削減と、夏冬二毛作間との作期分散による労働平準化を達成し、春先における労働負担削減を目的とする二毛作技術である。
  • 不耕起播種機にはジョン・シアラ社製NM-9500(販売価格:約400万円)を使用。作業・収量データは関東北部において取得したものである。

具体的データ

図1. 二毛作における耕起および不耕起体系の比較

図2. 各作付体系における作業工程数の比較

表1. 異なる除草剤利用条件下におけるトウモロコシの乾物収量図3. 異なる除草剤使用条件下における雑草植被率

その他

  • 研究課題名:飼料生産性向上のための基盤技術の確立と土地資源活用技術の開発
  • 課題ID:212-e
  • 予算区分:基盤
  • 研究期間:2002~2006年度
  • 研究担当者:森田聡一郎、菅野勉、黒川俊二、吉村義則