α-アミラーゼ添加によるリキッド飼料の粘性低減

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要約

米飯、パンなどデンプンの多い食品残さを主体として発酵リキッド飼料を調製する際、α-アミラーゼを添加しておくことで加熱処理時のデンプンの糊化を防ぎ、パイプラインによる輸送、給餌が可能な粘性の低い発酵リキッド飼料を調製できる。

  • キーワード:食品残さ、発酵リキッド飼料、粘性、α-アミラーゼ、飼料調製、ブタ、家畜生理・栄養
  • 担当:畜産草地研・機能性飼料研究チーム
  • 連絡先:電話0287-37-7804、電子メールwww-nilgs@naro.affrc.go.jp
  • 区分:畜産草地
  • 分類:技術・参考

背景・ねらい

コンビニエンスストアから消費期限切れ等で排出される食品残さとしては、米飯、おにぎり、菓子パンが多い。これら残さはデンプンを多く含んでおり、発酵リキッド飼料調製のために加水、加熱処理を行うことでデンプンが糊化し粘性が増すため、その後の発酵調製やパイプラインによる輸送、給餌の際に問題となる。
そこで食品残さを用いた発酵リキッド飼料調製時のα-アミラーゼ添加による粘性抑制効果について検討する。

成果の内容・特徴

  • コンビニエンスストアから排出される米飯、おにぎり、菓子パンを主体として配合設計した肥育豚用リキッド飼料原料にα-アミラーゼを0(無添加)、0.01、0.1、1、10、100U/gの濃度で添加し、70℃、30分の加熱処理を行った後、乳酸菌LQ80と枯草菌LQ13の複合スターターを添加して一晩発酵リキッド飼料調製を行う。
  • α-アミラーゼを添加しておくことで、加熱処理時のデンプン糊化によるリキッド飼料原料の粘度の上昇を抑制することができる(図1a)。
  • α-アミラーゼ添加の有無に関わらず、調製された発酵リキッド飼料の粘度は加熱後に比べて高くなるが(図1b)、α-アミラーゼを10、100U/gの濃度で添加した発酵リキッド飼料の粘度は、加熱前の粘度よりも低い。
  • 調製された発酵リキッド飼料は、α-アミラーゼの添加濃度依存的にpHが低くなり、乳酸含量が高まり、発酵品質が改善される(図2)。
  • α-アミラーゼを10U/gの濃度で添加して実用規模(1トン)で調製を行うと、小規模での調製と同様に粘度が低く、乳酸発酵主体の良質な発酵リキッド飼料が調製でき(表1)、パイプラインによる給餌が可能である。

成果の活用面・留意点

  • 食品残さ等からリキッド飼料を製造している飼料工場で本情報は活用される。
  • 粘性を抑制することで乾物率の高いリキッド飼料を調製でき、加熱処理や運搬に要する燃料の削減など、生産コストの低減につながる。
  • 発酵リキッド飼料はpHが下がりすぎると嗜好性に影響することが懸念されるので、給与時にpHの高いものと混合して給与するなどの工夫も必要となる。
  • 本試験で用いたα-アミラーゼはAspergillus oryzaeより精製された飼料添加用のもので、至適温度は55℃である。

具体的データ

図1 リキッド飼料の加熱(a )および発酵(b)に伴う粘度の変化(n = 3 )

図2 小規模(5 0 0ml )で調製した発酵リキッド飼料の品質(n = 3 )

表1  実用規模(1トン)で調製した発酵リキッド飼料の品質

その他

  • 研究課題名:食品残さや農産副産物等の利用拡大と健康な家畜生産のための飼料調製、利用技術の開発
  • 課題ID:212-i
  • 予算区分:バイオリサイクル
  • 研究期間:2002~2006年度
  • 研究担当者:守谷直子、大森英之、石田三佳、田島清、大塚舞、小橋有里、蔡義民、徐春城、川島知之