ミツバチ蜜とは異なるハリナシミツバチ蜜の持つ特異な抗菌性
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要約
ハリナシミツバチ類の産する蜂蜜は、ミツバチ類の蜂蜜とは作用機構の異なる強い抗菌性、および黄色ブドウ球菌などに対する広い抗菌スペクトラムを有し、有用健康食品として有望である。
背景・ねらい
ハリナシミツバチ類には病原性微生物による病気が報告されていない。さらに、ハリナシミツバチ養蜂の生産物である蜂蜜は、それらの生息地である亜熱帯・熱帯地域では古来より食物以外に、眼病、皮膚病、消化器系諸病などに対する薬として利用されている。これらのことから、本研究ではハリナシミツバチ蜜の有用機能性の1つとして、抗菌性等を含む抗病原性に注目し、多方面からの解析を通して、有用健康食品化への道を探る。
成果の内容・特徴
- ハリナシミツバチ蜜の抗菌活性は、ミツバチ蜜に比べ格段に強い(図1、図2、表1)。
- ハリナシミツバチ蜜は、種および生息地により異なるが、ミツバチ蜜より広い抗菌スペクトラムを持つ(図2)。
- ミツバチの蜜の抗菌性要因として、高糖質濃度、低pH、過酸化水素産出の3点が知られているが、それらの効力を除いた場合(希釈、pHの調整、カタラーゼの添加)においても、ハリナシミツバチの蜜は高い抗菌活性を示し、3点以外の抗菌性要因が存在する(表1)。
- ハリナシミツバチ蜜の有するこのような高い抗菌性は、ミツバチ類とは異なる巣の材質にある。すなわち、ミツバチ類では蜜を貯える巣房は蜜蝋だけでできているのに対し、ハリナシミツバチ類の巣内貯蜜ポットは抗菌性機能等を有するプロポリスでできている。これらプロポリスの抗菌性有効成分が、高調液である貯蜜へ移行した結果であると判断される(図3)。
成果の活用面・留意点
- プロポリスの健康に対する関心は増大しており、その国内市場はロイヤルゼリーを追い抜き蜂蜜市場に次いで養蜂生産物第2位となっている。しかし、ミツバチにおけるプロポリス有効成分の抽出法(水、アルコール等)には安全上いくらかの懸念が残っている。一方、プロポリス成分を含有しているハリナシミツバチ蜜は成虫の食糧であり、ハリナシミツバチ養蜂の主要な食物でもあることから安心安全な健康食品として今後わが国においても利活用され得る。本研究成果は、ハリナシミツバチ蜜の健康食品としての利用性についての科学的な資料となり、その市場開発に資する。
- ハリナシミツバチ類は30余種が伝統的に養蜂種として飼養されている。本成果は、これらの内の15種の解析結果であり、その他の種については有用性が未確認のため、同様の調査で確認する必要がある。
具体的データ
その他
- 研究課題名:ハリナシミツバチ類の産出する有用機能性物質の機能解明と利用
- 課題ID:212-j
- 予算区分:基盤、ジーンバンク
- 研究期間:2006年度
- 研究担当者:天野和宏、木元広実、鈴木幸一(岩手大)、唐澤忠宏(金沢大)