MWPLSR法を用いた近赤外分析法による乳牛尿中カリウムの分析

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要約

乳牛の尿中カリウム含量は、近赤外分析法のPartial Least Square Regression (PLSR)法を改良したMoving Window PLSR (MWPLSR)法による検量線を用いることにより高い精度で分析でき、乳牛の尿中カリウムの簡易測定法として飼養管理等に活用できる。2011-07-20

  • キーワード:NIRS、乳牛、尿、カリウム、MWPLSR、畜産環境
  • 担当:畜草研・畜産支援センター中小家畜飼養技術開発室、資源化システム研究チーム
  • 連絡先:電話029-838-8473、www-nilgs@naro.affrc.go.jp
  • 区分:畜産草地研
  • 分類:技術・参考

背景・ねらい

乳牛におけるカリウムの過剰摂取は、乳熱やグラステタニー等を引き起こす一要因とともに、尿中に排泄されて堆肥中のカリウム含量を高め、土壌中カリウムの過剰蓄積を引き起こしている。このことは、牧草中のカリウム含量を高めたり、耕種部門等への堆肥利用拡大の大きな障害になっている。このようなことから、乳牛からのカリウム排出量を低減させ乳牛の生産性と堆肥の品質向上を図るためには、尿中カリウムの正確かつ迅速な測定法を確立する必要がある。そこで近赤外分光法等を利用した簡易測定法の確立を図る。

成果の内容・特徴

  • 乳牛の尿試料48点のカリウム含量は、原子吸光法により定量し0.38~1.39mg/dlの範囲にある。
  • 採取した状態の尿を1mm厚の透過セルに充填し、400nm~2500nmの範囲における近赤外透過スペクトルを測定し、検量線作成試料群(32点)を用いて、スペクトルの全領域を用いる Partial Least Square Regression (PLSR)法およびスペクトル部分領域を用いるMoving Window Partial Least Square Regression (MWPLSR)法 により検量線を作成する。検量線の推定精度の確認は、検量線検定試料群(16点)のカリウム濃度を求め、近赤外推定値と原子吸光法による分析値との相関係数(r)、回帰推定からの標準誤差(SEP)により判定する。
  • PLSR法を用いた検量線の検定では、カリウム含量の推定精度はr=0.664、SEP=0.222と分析精度が低下するが(図3)、MWPLSR法(2164-2362nm)(図1、2)はr=0.960、SEP=0.095であり(図4)、高い精度が得られる。このことからMWPLSR法による検量線は、PLSR法のそれより高い精度を持ち推奨される。

成果の活用面・留意点

  • MWPLSR法による検量線を用いた乳牛の尿中カリウム含量の簡易測定法として飼養管理に活用できる。
  • MWPLSRを計算させるソフトウエアーは市販されていないが、プログラムを作成した関西学院大学から入手することができる。
  • MWPLSRソフトウエアーを起動させるコンパイラーが必要である。

具体的データ

図1 MWPLSR 法による波長領域に対するSum of Squared Residual (SSR) プロット(二次微分)図2 MWPLSR法による領域の設定

図3 PLSR法による検量線と検定

図4 MWPLSR法(2164-2362nm)による検量線と検定

その他

  • 研究課題名:家畜排せつ物の効率的処理・活用のための飼養管理システム及び資源化促進技術の総合的検証と新たな要素技術の開発
  • 課題ID:214-t
  • 予算区分:基盤研究費
  • 研究期間:2005~2006年度
  • 研究担当者:甘利雅拡、大谷文博