ほ乳期の黒毛和種・体細胞クローン後代雄牛における血液性状
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要約
3カ月齢までのほ乳期の血液性状(赤血球数、白血球数、ヘモグロビン、ヘマトクリット値および23項目の生化学検査)において、体細胞クローン牛の後代牛と対照牛(人工授精由来)の間には差異なく推移している。今回の調査項目のいずれでも、後代牛と対照牛との間の顕著な差異や正常範囲を逸脱する項目はない。
- キーワード:牛、体細胞クローン牛、後代牛、黒毛和種、ほ乳期、血液性状、家畜育種・繁殖
- 担当:畜産草地研・高度繁殖技術研究チーム
- 連絡先:電話029-838-7382、電子メールwww-nilgs@naro.affrc.go.jp
- 区分:畜産草地
- 分類:研究・参考
背景・ねらい
わが国では、222頭の体細胞クローン牛の後代牛が主に人工授精により生産されている。これらの牛の受胎から出生にいたる各プロセスにおいて、体細胞クローン牛で頻発する異常はほとんど認められていない(平成18年8月現在の全国調査;畜草研)。 本研究では、生涯を通じて死亡発生が多い時期といわれる出生後数カ月間(ほ乳期)における体細胞クローン後代雄牛の健全性を把握するため、これら牛の血液性状を調査する。
成果の内容・特徴
- この成果は、平成17年6月~11月の間に生まれたほ乳期(生後から3カ月齢まで)の体細胞クローン後代雄牛(黒毛和種、5頭)と人工授精で生産した対照雄牛(黒毛和種、4頭)の血液性状を調査した成績である。後代牛、対照牛ともに、概ね順調な発育を示しているが、標準値を下回る後代牛が1頭存在する。供試牛の12カ月齢までの発育状況を図1に示す。
- 赤血球数、白血球数、ヘモグロビン、ヘマトクリット値において、後代牛と対照牛との間に大きな差異は認められない。
- 肝機能(アルブミン(図2)、GOT(図3)、GPT、γ-GPT、総ビリルビン、総タンパク、ALP、LAP、LDH、グルコース)および腎機能(BUN、尿素、クレアチニン、CPK、グルコース)の指標となる項目において後代牛と対照牛との間で顕著な差異や正常値を逸脱する項目は見いだされない。
- 骨代謝(Ca(図4)、ALP)および脂質代謝(中性脂肪、総コレステロール)の指標となる項目ならびにミネラル(Ca、P、Mg、Na、K、Cl)では後代牛と対照牛との間で顕著な差異や正常値を逸脱する項目は見いだされない。
成果の活用面・留意点
- 体細胞クローン後代牛の健全性を考察する場合、死亡発生が多い時期といわれるほ乳期のデータは必須である。
- 体細胞クローン後代牛の生涯にわたる健全性を検討するためには、離乳以降の調査(現在、実施中)も必要である。
具体的データ




その他
- 研究課題名:高品質畜産物生産のためのクローン牛等の安定生産技術の開発
- 課題ID:221-n
- 予算区分:高度化事業
- 研究期間:2004~2006年度
- 研究担当者:渡辺伸也、藤田達男(大分農水研セ)、木下正徳(大分農水研セ)、志賀一穂(大分農水研セ)、
高橋清也、赤木悟史、下司雅也