発情周期、妊娠および分娩後のブタ子宮内膜におけるアポトーシスの発現

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要約

発情周期および妊娠初期におけるブタ子宮内膜の機能は、アポトーシスによって制御されていることがTUNEL法によるDNA断片化の検出により明らかにされる。

  • キーワード:ブタ、子宮内膜、発情周期、アポトーシス、家畜育種・繁殖
  • 担当:畜産草地研・高度繁殖技術研究チーム
  • 連絡先:電話029-838-8632、電子メールwww-nilgs@naro.affrc.go.jp
  • 区分:畜産草地
  • 分類:研究・参考

背景・ねらい

哺乳動物の子宮は妊娠と分娩に伴って、その機能と構造が劇的に変化する。受精した胚が発育し、子宮内膜に着床して妊娠成立した後、胎子を発育させるための機能具備が短時間に起こる。また、分娩後は急激に子宮容積を減少させるのと併せて、分娩時に生じた出血や組織の損傷、炎症等が、次回の妊娠が可能なまでに内膜組織の修復が行なわれる。それら子宮構造と機能の変化は、不明な点が多い。
そこで、子宮機能のアポトーシスによる恒常性の制御の観点から検討する。アポトーシスの発現は、結果として生じるDNA断片化を子宮の凍結切片に対するTUNEL法により組織化学的で検出する。

成果の内容・特徴

  • 発情周期の15から発情期の20日目(発情期)に向かって内膜上皮細胞で、発情周期8日目をピークに内膜固有層でアポトーシスが観察される(表1)。
  • 発情後人工授精を行ない、子宮内に生存胚(受胎産物)の確認される雌ブタを妊娠とし、妊娠4日目から15日目までは発情周期にあるブタと類似したアポトーシスの発現が観察される。その後、妊娠21日目では、子宮上皮および内膜固有層で陽性細胞が観察されるが、受胎産物を形成する絨毛膜細胞ではアポトーシスが観察されない(表1、図1a~f)。
  • 分娩後1および13日目の上皮細胞、1~31日目の内膜固有層でアポトーシスが散見されるが、発情周期や妊娠初期に比べて規則性の無い発現である。
  • 発情周期と妊娠初期において、子宮内膜の機能がアポトーシスにより恒常性が制御されていることが示唆される。

成果の活用面・留意点

分娩後の子宮修復へのアポトーシスの関与を解明するには、分娩後のより多くの段階で子宮材料を採取するとともに、例数を増加させて更に詳細な検討を行う必要がある。

具体的データ

表1 発情周期、妊娠初期および分娩後子宮修復過程のブタ子宮内膜組織へのTUNEL 染色によるアポトーシスの検出

図1 ブタ子宮内膜におけるアポトーシス(TUNEL 法)

その他

  • 研究課題名:高品質畜産物のためのクローン牛等の安定生産技術の開発
  • 課題ID:221-n
  • 予算区分:基盤研究
  • 研究期間:2006年度
  • 研究担当者:岡野彰