シバ型草地放牧が黒毛和種去勢牛肉の変色に及ぼす影響

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要約

シバ型草地放牧によって変色を抑制する機能を持つ筋肉中のビタミンEやβ-カロテンは増加するにもかかわらず、胸最長筋、腰最長筋、半腱様筋では放牧によって変色は速くなる。一方、中殿筋や大腰筋、半膜様筋では放牧によって変色が速くなることはなく、濃厚飼料を補給して放牧すると変色は抑制される。

  • キーワード:放牧、肉用牛、ビタミンE、メトミオグロビン、畜産物・品質
  • 担当:近中四農研・粗飼料多給型高品質牛肉研究チーム
  • 連絡先:電話0854-82-2047、電子メールwenarc-seika@naro.affrc.go.jp
  • 区分:畜産草地、近畿中国四国農業・畜産草地
  • 分類:研究・参考

背景・ねらい

牛肉の色調はミオグロビンという色素タンパクによって決定される。このミオグロビンのうち約30%以上がメトミオグロビン(MetMb)に酸化されると肉の褐色化が目に見えて分かり、商品価値が低下する。MetMbへの酸化は筋肉部位や飼養条件など様々な要因によって速度が異なる。胸最長筋や半腱様筋では放牧によって変色を抑制する筋肉中のビタミンE含量が増加するにもかかわらず、MetMbへの酸化が速くなり、日持ちが悪くなることが報告されている。本研究では6つの筋肉部位について放牧が牛肉の変色に及ぼす影響を明らかにする。

成果の内容・特徴

  • 黒毛和種去勢肥育牛を供試し、1)そのまま舎飼で肥育を継続する「舎飼区」(濃厚飼料飽食、乾草1.5kg)、2)シバ型草地(シバ優占度90%以上)でと畜までの3ヶ月間濃厚飼料を補給せずに放牧する「放牧区」、3)同じくシバ型草地でと畜までの5ヶ月間濃厚飼料3kg/day頭を補給して放牧する「放牧+補給区」、の3試験区を設定する。各区4頭とし、いずれも24~25ヶ月齢でと畜する。と畜、格付け、解体した後、半腱様筋(ST)、半膜様筋(SM)、中殿筋(GM)、胸最長筋(LT)、腰最長筋(LL)および大腰筋(PM)を採取し、MetMb割合(変色の度合い)の分析に供する。またSTはβ-カロテン、ビタミンEおよび粗脂肪含量の分析に供する。
  • ST中のβ-カロテン含量は放牧によって著しく増加し(表1)、またビタミンE含量も放牧によって増加する。粗脂肪含量は「放牧区」において低いが、「放牧+補給区」では「舎飼区」との差はない。
  • 4℃・蛍光灯下で展示中のMetMb割合は変色の遅い部位であるLLやLTでは「放牧区」および「放牧+補給区」で「舎飼区」よりも高くなり、放牧によって変色しやすくなる(図1)。一方変色の速い部位であるPM、GM、SMでは「舎飼区」と「放牧区」で差はないが、「放牧+補給区」ではMetMb割合は低くなり、濃厚飼料補給を伴う放牧によって変色は抑制される。変色の速さが中程度であるSTでは「放牧区」が「舎飼区」よりも高く、「放牧+補給区」はその中間の値を示す。

成果の活用面・留意点

  • 本試験では月齢や系統による個体差を排除するため、供試牛を揃えている。
  • 黒毛和種去勢牛を供試していることに留意する必要がある。
  • 「放牧区」の放牧期間は3ヶ月間、「放牧+補給区」の放牧期間は5ヶ月間であることに留意する必要がある。
  • 放牧区および放牧+補給区では、舎飼区よりも肉のL*(明度)が低い(肉色が濃い)傾向にある。

具体的データ

表1. 中ST のβ-カロテン(μ g/kg)、ビタミンE(μ g/g)および粗脂肪含量(g/100g)

図1.4°C・蛍光灯下でのMetMb 割合(%)の変動

その他

  • 研究課題名:地域条件を活かした健全な家畜飼養のための放牧技術の開発
  • 課題ID:212-d
  • 予算区分:ブラニチ3系
  • 研究期間:2003~2005年度
  • 研究担当者:松本和典、柴田昌宏、相川勝弘、安藤貞、西口靖彦、早坂貴代史