診断票による里地放牧の普及・技術改善のポイント

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要約

里地放牧技術の診断票を用いた放牧実施経営の診断結果から、放牧技術レベルの向上には放牧馴致や放牧面積の確保が、耕作放棄地の解消や地域の放牧普及には多頭経営をターゲットに放牧技術を集中的に移転することが有効である。

  • キーワード:中山間、放牧、技術診断、馴致、肉用牛
  • 担当:中央農研・関東飼料イネ研究チーム
  • 連絡先:電話029-838-8856、電子メールmsenda@affrc.go.jp
  • 区分:畜産草地
  • 分類:行政・参考

背景・ねらい

畜産経営の改善に寄与し、社会的支持の得られる里地放牧の普及を図るためには、多角的に放牧技術の点検を行い、改善方向を示す必要がある。そこで、放牧技術、放牧を活用した営農技術・地域貢献活動等6局面について策定した診断票を用いて、放牧実施経営の技術を診断し、経営属性ごとの技術水準等を明らかにし、里地放牧の普及及び技術改善のポイントを明らかにする。

成果の内容・特徴

  • 診断実施経営37戸の平均点は27.8点であり、放牧普及率の高いA市(36.7%)で評点が高く(29.5点)、普及率の低い地区では評点は低い(表1)。
  • 放牧馴致局面の評点と他の局面との相関係数が高い(表2)。このことから、放牧馴致の指導が放牧技術全体のレベル向上に重要なポイントになると考えられる。
  • 放牧実施経験年数から診断経営を3区分して評点を比較すると、放牧経験年数の長い経営ほど、放牧馴致、草地管理及び経営革新の項目を中心に評点が高い(図1)。このことから、放牧馴致等の放牧技術の向上には4~5年の時間を要することを念頭に置いた技術指導が必要である。
  • 飼養頭数から診断経営を3区分して比較すると、飼養頭数が多い経営ほど、経営革新及び地域貢献の項目を中心に評点が高い(図2)。このことから、耕作放棄地の解消が重要な課題となっている地域では、多頭経営をターゲットに放牧技術を集中的に移転し、放牧実践農家を育成することが、地域の問題解決や地域への放牧普及を促すことに有効である。
  • 繁殖牛1頭当たり放牧面積から診断経営を3区分して比較すると、放牧面積の大きい経営ほど、草地管理、経営革新、地域貢献の評点、及び評点合計が高く、技術レベルが高い(図3)。そこで、放牧面積の小さい経営が多い地域では、放牧用地確保に重点を置いた支援活動が放牧技術向上に必要である。他方、1頭当たり放牧面積50a以上の階層では家畜生産の評点が低いことから、こうした経営では繁殖管理や子牛育成等の技術指導が放牧技術向上のポイントとなる。

成果の活用面・留意点

  • 里地放牧の普及、技術指導に活用できる。
  • 診断票は、「里地放牧技術の診断票」(2005年度共通基盤研究成果情報)による。
  • 診断は、普及指導機関職員とともに研究担当者が実施した。

具体的データ

表1 里地放牧技術の診断結果

表2 診断局面間の順位相関係数図1 放牧実施経験年数と放牧技術の評価

図2 飼養頭数規模と放牧技術の評価図3 放牧面積と放牧技術の評価

その他

  • 研究課題名:放牧技術の普及に向けた家畜生産技術の高度化と多様な飼料資源を活用した放牧技術の開発
  • 課題ID:212-d
  • 予算区分:基盤
  • 研究期間:2004~2008年度
  • 研究担当者:千田雅之、小山信明(畜草研)
  • 発表論文等:千田(2006)「中山間里地の適正放牧規範の策定と放牧管理の診断」農業経営研究44(1)、34-40