稲発酵粗飼料の給与により牛肉中にビタミンEが蓄積し、貯蔵性が向上する

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要約

ビタミンEを豊富に含くむ稲発酵粗飼料を交雑種牛に肥育全期間または前後期に給与すると、稲発酵粗飼料を給与しない牛よりもビタミンEが蓄積する。また牛肉に蓄積したビタミンE含量が多いほど、冷蔵貯蔵中の脂質の酸化や肉色の劣化が防止される。

キーワード:稲発酵粗飼料、ビタミンE、牛肉
担当:畜産草地研・関東飼料イネ家畜飼養研究サブチーム
連絡先:電話0287-36-0111
区分:畜産草地、共通基盤・総合研究
分類:技術・普及

背景・ねらい

牛肉中にビタミンE含量が多いと、冷蔵庫にラップして貯蔵された牛肉では、脂肪の酸化や肉色の劣化が防止されることが知られている。稲発酵粗飼料はビタミンE含量が多いといわれており、稲発酵粗飼料の給与による牛肉中へのビタミンEの蓄積は新たな付加価値として期待される。そこで、稲発酵粗飼料を給与して生産された交雑種牛肉を用いて、稲発酵粗飼料給与が牛肉のビタミンE含量や貯蔵性に及ぼす影響を明らかにする。

成果の内容・特徴

8ヵ月齢の交雑種牛12頭を供試し、全期間区では稲発酵粗飼料を原物で肥育前期(7ヵ月間)7kg、中期(7ヵ月間)5kg、後期(6ヵ月間)5kg給与し、前後期区では稲ワラを給与した中期を除き稲発酵粗飼料を全期間区と同量給与、慣行肥育である対照区では前期はチモシー乾草3kg、中期以降は稲ワラを1.5kg給与した。稲発酵粗飼料のα-トコフェロール含量は、乾物1kg 当たり329mgであった。稲発酵粗飼料の給与期間が長くなるほど、胸最長筋中のα-トコフェロール含量(ビタミンEの同族体の一つ)は多い傾向を示し、全期間区は対照区より多くなる(図1)。
4°Cの冷蔵庫に胸最長筋を貯蔵すると、脂質の酸化度を示すTBARS値の増加は全期間区<前後期区<対照区となり、稲発酵粗飼料の給与により脂質酸化が防止される(図2)。
稲発酵粗飼料を給与した27頭の交雑種牛について、胸最長筋中のα-トコフェロール含量と冷蔵庫に貯蔵後13日目のTBARS値の関係を検討したところ、胸最長筋中のα-トコフェロール含量が多いほど、13日目のTBARS値が低下し、脂質の酸化が防止される(図3)。
稲発酵粗飼料を給与した27頭の交雑種牛について、胸最長筋中のα-トコフェロール含量と冷蔵庫に貯蔵後13日目のメトミオグロビン割合の関係を検討したところ、胸最長筋中のα-トコフェロール含量が多いほど、13日目のメトミオグロビン割合が少なくなり、肉色の劣化が防止される(図4)。