糞上移植による放牧地の省力的なシバ草地化
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要約
糞上移植により、従来よりも省力的に放牧地へシバの導入が可能である。移植後も放牧を継続しながら草高を10cm前後に維持することで、掃除刈りをしなくてもシバ草地化できる。
- キーワード:シバ、省力、糞上移植、放牧
- 担当:畜産草地研・放牧管理研究チーム
- 連絡先:電話0287-36-0111
- 区分:畜産草地
- 分類:技術・普及
背景・ねらい
生産性が高い牧草地の維持には、施肥や掃除刈りといった緻密な管理作業が必要となる。しかし近年、公共牧場や高齢化した農家など
では、作業労力不足により牧草地の維持管理が困難となり利用率の低下が生じている。このような草地を、管理が容易なシバ草地にすることで利用率を向上させ
ることができる。しかし、従来の移植によるシバ草地化には多くの手間と労力を要する。そこで、省力的にシバ草地化できる移植法および移植後の放牧条件を明
らかにする。
成果の内容・特徴
- 糞上移植は、牧草地内に排泄されている放牧牛の糞にシバ苗をのせ足で踏みつけて移植する(図1)。
- 移植する苗は8×8cm 厚さ5cm程度の切り出し苗を使用する。シバ苗の乾燥を防ぐため、移植は梅雨時期に行い、移植には水分を多く含んだ新鮮な糞を選ぶ。
- 糞上移植によるシバ苗移植の作業能率は6.6(移植株/分)と、鍬を用いて穴を掘り移植する方法(従来移植と呼ぶ)の3.9(移植株/分)よりも明らかに高い(表1)。さらに糞上移植では、従来の移植法に比べ、負担のかかる姿勢が少ない。
- 糞上移植した苗は、移植直後に放牧を行っても牛に引き抜かれることがなく、定着率は従来移植と変わらない(表1)。
- シバ苗移植後、放牧により草高を10cm前後に維持する(高放牧圧区)と、5年後にシバの被度が50%以上になり、主要雑草の被度は1%以下に抑えられる(表2、図2)。これよりも草高が高くなる(低放牧圧区)と、シバの被度は17.4%と低くなり、主要雑草の被度が高くなる。
成果の活用面・留意点
- 管理作業が困難となり牧草が衰退した放牧地において、放牧を継続しながら省力的にシバ草地化することが出来る。
- 移植当年より草高を低く維持する放牧を行い、シバの被度拡大に合わせて放牧圧を変動させ、シバ草地化後(シバ被度70%程度)には1-2頭/haの放牧を行う。
- 早期にシバ草地化するためには移植翌年以降も糞上移植を継続してシバの移植密度を高める。
具体的データ



その他
- 研究課題名:放牧効果の解明に基づく健全な家畜飼養技術の開発
- 課題ID:212-d
- 予算区分:基盤
- 研究期間:2001~2005年度
- 研究担当者:北川美弥、池田堅太郎、西田智子、山本嘉人、梨木守、畠中哲哉
- 発表論文等:
1)北川ら(2007)日草誌53(2):102-108
2)北川ら(2008)日草誌53(4):266-269