黒毛和種牛肉の脂質酸化抑制に必要な肥育後期の稲発酵粗飼料給与量

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要約

黒毛和種去勢牛の肥育後期における稲発酵粗飼料給与量の違いは、増体や枝肉成績に影響しない。肥育後期に稲発酵粗飼料を現物で5kg以上給与すると、牛肉中のビタミンE含量は抗酸化機能が期待されるレベルに達し、脂質酸化が抑制される。

  • キーワード:稲発酵粗飼料、ビタミンE、肉用牛
  • 担当:畜産草地研・飼料調製給与研究チーム
  • 連絡先:電話0287-36-0111
  • 区分:畜産草地
  • 分類:技術・参考

背景・ねらい

稲発酵粗飼料には抗酸化機能を有するビタミンEが多く含まれており、稲発酵粗飼料を有効活用することによって、国産牛肉に新たな 付加価値を与えることが期待される。しかし稲発酵粗飼料の給与条件の違いが肥育成績に及ぼす影響は明らかでない。そこで、黒毛和種去勢牛の肥育後期におけ る稲発酵粗飼料給与量の違いが肥育成績に及ぼす影響を検討する。

成果の内容・特徴

  • 黒毛和種去勢肥育牛を21ヵ月齢までは濃厚飼料と稲ワラを飽食させ、22ヵ月齢から30ヵ月齢までの肥育後期は、稲発酵粗飼 料の給与量の違いにより多給区(稲発酵粗飼料を現物8kg、濃厚飼料を現物5kg給与、3頭)、中給区(稲発酵粗飼料5kg、濃厚飼料7kg、3頭)、少 給区(稲発酵粗飼料2kg、濃厚飼料9kg、3頭)の3群に分けて飼養した。濃厚飼料乾物1kg中のビタミンE含量は18mg、給与した稲発酵粗飼料は黄 熟期にサイレージ調製を行なった「はまさり」である。ビタミンE測定の前処理として電子レンジ処理後40度乾燥を行い、HPLC法で測定した稲発酵粗飼料 乾物1kg中のビタミンE含量は138mgであり、肥育後期の稲発酵粗飼料からのビタミンE総摂取量は、多給区で約85000mg、中給区約 53000mg、少給区約21000mgである。
  • 肥育後期の稲発酵粗飼料給与量は、終了時体重や日増体量、赤肉重量や皮下脂肪重量等の枝肉構成には影響しない。内臓脂肪重量は、少給区、中給区、多給区の順に重くなる(表1)。
  • 肥育後期の稲発酵粗飼料給与量は、枝肉重量、ロース芯面積、BMSナンバー等の枝肉成績に影響しない。バラ厚は少給区が多給区より有意に厚くなる(表2)。
  • 稲発酵粗飼料多給区及び中給区の半腱様筋中のビタミンE含量は少給区より有意に高く、黒毛和種牛肉において抗酸化機能発揮に必要とされる3.5mg/kgを上回る(図1)。
  • 脂質酸化の指標であるTBARS値は、多給区及び中給区が少給区より有意に低くなり、牛肉の脂質酸化が抑制される(図2)。

成果の活用面・留意点

  • 稲発酵粗飼料を活用した牛肉の付加価値化に利用できる。
  • 黄熟期刈取した「はまさり」の予乾処理を行わない稲発酵粗飼料を用いており、刈取熟期や予乾処理が、稲発酵粗飼料中のビタミンE含量を低下させる可能性に留意する必要がある。

具体的データ

表1. 増体および枝肉構成

表2. 枝肉成績

図1. 半腱様筋中ビタミンE含量 図2. 半腱様筋TBARS値の変化

 

その他

  • 研究課題名:発酵TMR利用のための大規模生産・調製・流通・給与技術の確立
  • 課題ID:212-f
  • 予算区分:委託プロ(えさプロ)
  • 研究期間:2006~2010年度
  • 研究担当者:山田知哉、河上眞一、中西直人