低カリウム粗飼料である飼料イネを利用した乳牛の尿量低減化

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要約

飼料イネはカリウム含量の低い粗飼料源であり、飼料イネサイレージの給与は乳牛の尿量低減化に有効である。

  • キーワード:飼料イネ、カリウム含量、尿量低減化、乳牛
  • 担当:畜産草地研・資源化システム研究チーム
  • 連絡先:電話029-838-8646
  • 区分:畜産草地
  • 分類:技術・参考

背景・ねらい

栄養管理によって乳牛から排泄される尿を減量化できれば、排泄物処理の負担が軽減されるだけでなく、糞尿の堆肥としての利用も容 易となるため、資源循環も促進される。これまでにカリウム給与量の低減化が、乳牛の尿量減少に有効であることが明らかにされてきた。しかし、国内の主要な 牧草の乾物あたりのカリウム含量が3%を超えている現状では、その栄養管理の実施に際して、カリウム含量の少ない粗飼料源を探索すること必要である。近年 利用が拡大している飼料イネは、稲ワラ中のカリウム含量が比較的低いことから、その候補として有望と考えらる。そこで、飼料イネについてそのカリウム含量 を広範に調査するとともに、実際の乳牛への給与が尿量の減量化に有効であるのかを評価する。

成果の内容・特徴

  • 北海道から九州までの全国各地で栽培された飼料イネ用品種・系統のサンプル138点のカリウム含量の平均値は1.24%DMである(図1)。
  • 例外的に2%DMを越すサンプルが1点ある他は、すべて2%DM以下のカリウム含量であり、1.5%DM以下が8割以上を占める。従って、飼料イネは低カリウム粗飼料資源と位置づけられる(図1)。
  • 非妊娠乾乳牛4頭(平均体重590kg)にカリウム含量の高いスーダングラスサイレージ(カリウム含量:4.03%、乾物 率:48.9%)と飼料イネサイレージ(同:1.42%、35.7%)を同等のTDN水準で給与すると、飼料イネサイレージを給与した乳牛のカリウム摂取 量は、スーダングラスサイレージ給与時の4割に抑制される(表1)。
  • その時の水分出納を見ると、スーダングラスサイレージに比べて飼料イネサイレージ給与時には、飼料から供給される水分の増加量以上に飲水 量が大きく減少し、尿中への水分排泄量はスーダングラスサイレージ給与時のおおよそ6割に減少することから、飼料イネサイレージの給与は乳牛の尿量低減化 に有効である(図2)。

成果の活用面・留意点

  • 乳牛の尿量を低減するための低カリウム飼料を設計するにあたり、使用する飼料原料を選択する際に活用できる。
  • 飼料イネを活用して低カリウム飼料を設計する際にも、飼料イネだけではなく、その他の飼料原料もできるだけカリウム含量の少ない飼料資源を組み合わせることが望ましい。
  • 早刈りをした飼料イネのカリウム含量は高くなる可能性がある。

具体的データ

図1.飼料イネサンプル138点のカリウム含量の分布 表1.水分出納試験における乾乳牛の摂取量

 

図2.スーダングラスおよび飼料イネサイレージを給与した乾乳牛の水分摂取量と水分排泄量

 

その他

  • 研究課題名:家畜排せつ物の効率的処理・活用のための飼養管理システム及び資源化促進技術の総合的検証と新たな要素技術の開発
  • 課題ID:214-t
  • 予算区分:基盤
  • 研究期間:2006~2008年度
  • 研究担当者:大谷文博、田鎖直澄、甘利雅拡、都丸友久(群馬畜試)、樋口浩二、永西修、野中最子