去勢牛におけるレジスチン及びTNF-α発現の品種特性
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要約
ウシのレジスチンcDNAの配列は他動物と高い相同性を持つ。腹腔内脂肪組織におけるレジスチンmRNA発現はホルスタイン種去勢牛で高く、TNF-αの発現は黒毛和種去勢牛で高い。これはグルコース代謝に異なる特徴を持つことを示す。
- キーワード:家畜生理、ウシ、レジスチン、TNF-α
- 担当:畜産草地研・栄養素代謝研究チーム
- 連絡先:電話029-838-8645
- 区分:畜産草地
- 分類:研究・参考
背景・ねらい
同じ反芻動物種でありながら黒毛和種牛は肉生産のため、ホルスタイン種牛は乳生産のために改良されてきた。そのため、異なるグルコース代謝の特徴を持つと考えられるが詳細は不明である。
本研究では日本飼養標準に従って飼養された黒毛和種(692±15kg、871±7日齢)と、黒毛和種と体重が同等となるように日本飼養標準に従い飼養さ
れたホルスタイン種(692±15kg、781±3日齢)去勢牛を用い、脂肪組織から分泌され、インスリン感受性低下に強く影響するレジスチンと腫瘍壊死
因子(TNF-α)のmRNA発現量の比較や、血漿中ホルモン及び代謝産物濃度の比較を行うことが目的である。
成果の内容・特徴
- 5'/3’-RACEによって得られたウシレジスチンcDNAの配列、及び予想されるアミノ酸配列はヒト、ブタ、及びマウスレジスチンの配列と高い相同性を持っている(表1)。
- リアルタイムPCRにより測定した腹腔内脂肪組織中のレジスチンmRNA発現量は黒毛和種に比べてホルスタイン種去勢牛の方が有意に高い(図1)。ホルスタイン種のグルコース代謝やインスリン感受性にはレジスチンが深く関わることを示唆している。
- 腹腔内脂肪組織中のTNF-α mRNA発現量はホルスタイン種に比べて黒毛和種去勢牛の方が高い傾向にある(図2)。黒毛和種のグルコース代謝やインスリン感受性にはTNF-αが関わることを示唆している。
- グルコース代謝に関係する血漿中ホルモンのインスリン、成長ホルモン濃度は両品種で有意な差は見られず、また、代謝産物であるグルコース、血中遊離脂肪酸濃度も両品種で有意な差は見られない(表2)。
成果の活用面・留意点
- 両品種におけるレジスチン及びTNF-α発現は内分泌器官として脂肪組織がグルコース代謝に関与する事を示し、また、発現量
の違いはグルコース代謝に異なる特徴を持つことを示すものである。これらは家畜のグルコース代謝及びインスリン感受性制御機構の解明に役立つ情報となる。
- グルコース代謝やインスリン感受性の変化にはいくつかのホルモン、サイトカイン及び栄養素が複合的に関与しているのでその他因子に関する調査も必要である。
- 飼料の給与条件及び栄養状態によってレジスチン及びTNF-αの発現は異なる。
具体的データ



その他
- 研究課題名:
ソマトトロピン軸の変動に伴うGLUT、ホルモンレセプター等泌乳制御物質の組織における発現量の解析
- 課題ID:212-h
- 予算区分:交付金
- 研究期間:2001~2005年度
- 研究担当者:小松篤司、伊藤文彰、櫛引史郎
- 発表論文等:Komatsu et al. (2005) Anim. Sci. J. 76:567-573