酪農地帯の窒素湿性沈着量は周辺山間部より多い

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要約

関東北部の集約酪農地帯中心部における年間の全窒素湿性沈着量は18.5kgha-1であり、対照山間部に比べて13kg ha-1多い。増加した窒素沈着量は家畜ふん尿起源と考えられる。

  • キーワード:バルクサンプル、湿性沈着、アンモニア、酪農
  • 担当:畜産草地研・資源循環・溶脱低減研究草地サブチーム
  • 連絡先:電話0287-37-7558
  • 区分:畜産草地、共通基盤・土壌肥料、関東東海北陸農業・関東東海・土壌肥料
  • 分類:研究・参考

背景・ねらい

家畜ふん尿に由来する窒素成分の一部はアンモニアとして大気に拡散し、湿性沈着および乾性沈着として再び地表に沈着する。沈着に より農耕地には窒素成分が投入されるばかりでなく、自然生態系には窒素負荷が増えることによる富栄養化を通じた様々な影響を与える。沈着の実態を明らかに するために関東北部の酪農地帯において雨水により沈着する窒素量を調査した。

成果の内容・特徴

  • 栃木県北部の集約酪農地帯とその周辺部(図1)で、2003年4月から2007年10月までの4年半の間、1ヶ月毎のバルクサンプルによる降雨量と窒素濃度を分析した。バルクサンプルは直径約14cmの漏斗で遮光ポリタンクに2反復で捕集した1ヶ月間の貯留雨水である。
  • 雨水の全窒素濃度は春に高く秋に低い傾向を示し(図2)、アンモニア態窒素、硝酸態窒素もほぼ同様である。
  • 雨水の窒素濃度の地点間差は大気中アンモニア濃度と対応する(図3)。
  • 4年間の平均全窒素濃度は酪農地帯中心部で1.3~1.7mgL-1であるのに対し対照山間部では0.5~0.7mgL-1である(図2)。平均採取雨量は年間1710mmで、この雨水による年間の全窒素湿性沈着量は酪農地帯中心部で18.5kgha-1に対し対照山間部では5.5kgha-1である(図4)。
  • 酪農地帯中心部と対照山間部の沈着量の差約13kg ha-1が家畜ふん尿窒素起源と考えられる。

成果の活用面・留意点

  • 家畜ふん尿窒素が大気中のアンモニアを介して地域内循環することを示す基礎知見である。
  • 今回測定したものはバルクサンプルによる湿性沈着であるが、このほかに乾性沈着が相当量見込まれる。

具体的データ

図1 観測地点図(栃木県北部、実線は旧市町村界)図2 雨水全窒素濃度の季節変動(図1に示す対照山間部と酪農地帯中心部の平均値)

 

図3 大気アンモニア濃度と雨水全窒素濃度の関係(地点別全期間平均値の対応)

 

図4 年間窒素湿性沈着量の地点間差(バーは標準偏差を示す)

 

その他

  • 研究課題名:有機性資源の農地還元促進と窒素溶脱低減を中心とした農業生産活動規範の推進のための土壌管理及び窒素負荷予測技術の開発
  • 課題ID:214-q
  • 予算区分:基盤、科研費
  • 研究期間:2006~2010年度
  • 研究担当者:寳示戸雅之、宮地朋子
  • 発表論文等:寳示戸ら(2006) 土肥誌77 47-52