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主要寒地型イネ科牧草に発生する新たな病害として、ライグラスピシウム病およびオーチャードグラス夏斑点病の2種を認め、病原糸状菌を同定した。いずれの病原菌も生育適温は25℃で、30℃でも良好に生育する。
C3型イネ科植物であるライグラスおよびオーチャードグラスは主要牧草として広く利用されるが、気候温暖化に伴い、発生する病害の種類が増加している。しかし、これらの中には診断・同定が行われていない病害もある。
そこで、牧草用ライグラスおよびオーチャードグラスで新たに発生した未特定病害を診断し、病原菌を同定して新たな病害としての位置付けを行う
2006年11月に栃木県那須塩原市のイタリアンライグラス圃場で発生を確認した。本病は個体植え株が高頻度で欠株となる症状を示す。罹病植物は地上部が黄化萎凋、枯死し、地際の褐変および根の黒変が認められる。病原菌の造卵器などの形態および分子系統から、病原菌をPythium spinosum、P. sylvaticum およびP. vanterpoolii の3種と同定した。培地上での生育適温は、いずれの菌種も25℃であるが、30℃でも良好に生育する。本病はライグラス芝地ですでに報告のあるピシウム病 と診断されたが、ライグラス牧草地では初めての発生で、病原菌はいずれもライグラスでは初報告である。イタリアンライグラス品種タチマサリおよびワセユタ カは本病に対し罹病性を示す。
2003 年8月に北海道訓子府町および2006年6月に栃木県那須塩原市で発生を確認した。病徴は葉身および葉鞘に淡褐色~褐色、楕円形~紡錘形、大きさ 2-10×1-3mmの斑点を形成し、後に病斑は融合して葉枯となる。病原菌は生育適温25℃、上限は35℃で、形態および分子系統からBipolaris sorokiniana と同定した。本病はオーチャードグラスでは未報告のため、オーチャードグラス夏斑点病(新称)とした。本病菌はライグラス夏斑点病菌、コムギ斑点病菌など と同種であり、オーチャードグラスの他、イタリアンライグラス、ブルーグラス、トールフェスクなどに強い病原性を示すが、エンバクおよびチモシーに対する 病原性は低い(表1)。