体細胞クローン雌牛の後代産子における体細胞由来ミトコンドリアDNAの混在割合

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要約

除核卵子に体細胞を移植して得られたクローン牛のミトコンドリアDNA(mtDNA)はそのほとんどが卵子由来のmtDNAであるが、数%未満の体細胞に由来するmtDNAの割合は、後代産子への伝達後0~50%と大幅に変化しうる。

  • キーワード:ウシ、体細胞クローン、後代産子、ミトコンドリアDNA
  • 担当:畜産草地研・高度繁殖技術研究チーム
  • 連絡先:電話029-838-8624
  • 区分:畜産草地
  • 分類:研究・参考

背景・ねらい

体細胞クローン家畜は核移植によって生産されるため、核DNAはドナー細胞と同一となるが、核外DNAであるミトコンドリア DNA(mtDNA)は多量の卵子由来mtDNAと微量の体細胞由来mtDNA(D-mtDNA)が混じり合ったヘテロプラズミーとなる。ミトコンドリア は生命活動に必要不可欠な働きをしており、mtDNAの相違やヘテロプラズミーが生産個体へ及ぼす影響が懸念されている。卵子に持ち込まれる体細胞 mtDNAは卵子のおおよそ1%程度であると考えられる。体細胞クローン技術は生殖を経た後代の利用が期待されているが、mtDNAの動態については明ら かでない。そこで、核移植による体細胞クローン(NT)牛の後代(G1)産子について、mtDNAヘテロプラズミーの伝達性を明らかにする。

成果の内容・特徴

  • 4種類の体細胞より得られたNT雌牛(表)の組織中には微量のD-mtDNAが含まれる(~7.6%)。
  • D-mtDNAを微量に含むNT牛のG1産子各々1頭は、高い割合でD-mtDNAを有するヘテロプラズミーである(17%, 36%, 46%, 51%)一方、残りのG1産子については5%未満であり、NT牛のG1産子は卵細胞形成時もしくは胚発生時に起こるボトルネック効果によって様々な割合のmtDNAヘテロプラズミーが生じうる(表、図)。
  • D-mtDNAが微量検出された6頭のNT牛は通常牛と同様に出産・産乳を行っており(Yonai et al., 2005)、 D-mtDNAの混入による影響はみられない。D-mtDNAの割合が46%のG1産子は胎子期に死亡したが、その他D-mtDNAの割合が高い3頭については正常に出生しており、D-mtDNAヘテロプラズミー率の高いことが産子の出生へ影響するとはいえない。

成果の活用面・留意点

  • 調査対象牛の血液もしくは毛根のみを調べた場合、D-mtDNAは検出されない場合がある(<5%)。mtDNA型を調べる折には、組織についても網羅的に調査する必要がある。

具体的データ

表 NT雌牛およびG 1産子におけるD-mtDNA含有率

図 NT雌牛とその後代のPCR-SSCP電気泳動像。左図は体細胞JおよびH1より作出したNT雌牛およびその後代、右図はNT雌牛(HC6)とその後代(H63)の組織中に検出されたD-mtDNA。

 

その他

  • 研究課題名:高品質畜産物生産のためのクローン牛等の安定生産技術の開発
  • 課題ID:221-n
  • 予算区分:交付金プロ(クローン牛)
  • 研究期間:2006~2010年度
  • 研究担当者:武田久美子、金山佳奈子(改良センター)、赤木悟史、米内美晴、田上貴寬、韮沢圭二郎、花田博文(東京農大)
  • 発表論文等:Takeda et al., (2007) Mol. Reprod. Dev. Published Online: DOI: 10.1002/mrd.20837