食品残さ飼料化の環境影響

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要約

食品残さのリキッド飼料化は残さを焼却廃棄する場合と比較して、温室効果ガス排出量およびエネルギー消費量を大きく低減する。また、リキッド飼料化・乾燥飼料化ともに、焼却廃棄と比較して水の消費量を大きく低減する。

  • キーワード:食品残さ、飼料化、ライフサイクルアセスメント(LCA)、環境影響評価
  • 担当:畜産草地研・機能性飼料研究チーム、浄化システム研究チーム
  • 連絡先:電話029-838-8676
  • 区分:畜産草地
  • 分類:研究・参考

背景・ねらい

我が国の飼料自給率は極めて低い状況にあり、その向上は重要な課題であるため、食品残さの飼料としての利用が期待されている。一 方、食品残さのリサイクルは環境保全の観点からも注目されているが、食品残さ飼料化の環境面についてはまだ明らかにされていない。そこで、ライフサイクル アセスメント(LCA)により、食品残さ飼料化の環境影響評価を行う。食品残さを液状飼料化する場合 (「リキッド」)、食品残さを乾燥飼料化する場合 (「乾燥」)、食品残さを焼却により廃棄する場合 (「焼却」)について比較する (図1)。

成果の内容・特徴

  • CO2換算 (CO2 eq)の温室効果ガス排出量については、生産飼料乾物1kg (代謝エネルギー量で調整済み、以下同)あたり、「乾燥」の平均値および「焼却」はそれぞれ1073、1066g CO2 eq、と同程度であり、「リキッド」の平均値は268g CO2 eqと非常に小さい (図2)。「乾燥」については事業所間の変動が大きく、食品残さの乾燥過程における廃熱や再生燃料利用の有無が影響している。また、製造される飼料の農家までの輸送を含める場合、片道輸送距離が200kmまで長くなってもリキッドの平均値は他と比較して半分以下である。
  • 「リキッド」・「乾燥」・「焼却」の生産飼料乾物1kgあたりエネルギー消費量の平均値はそれぞれ、3.9、16.7、14.5MJであり、「リキッド」が非常に小さい。
  • 水の消費量について「リキッド」、「乾燥」、「焼却」の平均値はそれぞれ2.9、5.1、1034.6Lである (表1)。「リキッド」および「乾燥」の消費量は「焼却」よりもはるかに小さい値であり、「焼却」においては、水の大部分は購入飼料原料の生産段階において消費されている。

成果の活用面・留意点

  • 評価の対象範囲は、食品残さを収集して養豚用飼料を製造する段階までである。なお「焼却」においては、他の場合において製造されるものと同量の飼料をアメリカ合衆国で生産し、輸入するものとしている。評価項目は、温室効果ガス排出量 (CO2、CH4、N2O)、エネルギー消費量、水消費量である。環境影響評価に必要なデータは、「リキッド」が2件、「乾燥」は3件の飼料化事業所に聞き取り調査を行うことにより取得し、一方、「焼却」については文献等から収集している。
  • 食品残さの飼料利用およびそれら活動の促進にあたって有用な情報となる。
  • 各飼料化事業所の特徴、用いた環境負荷発生係数等、詳細については発表論文を参照されたい。

具体的データ

図1. 食品残さ処理・利用システム

 

図2. リキッド、乾燥、焼却の各シナリオにおける温室効果ガス発生量

 

表1. リキッド、乾燥、焼却の各シナリオにおける水消費量

 

その他

  • 研究課題名:食品残さや農産副産物等の利用拡大と健康な家畜生産のための飼料調製、利用技術の開発
  • 課題ID:212-i
  • 予算区分:科研費
  • 研究期間:2005~2007年度
  • 研究担当者:荻野暁史、川島知之、田中康男、和木美代子、横山浩、池口厚男
  • 発表論文等:Ogino et al. 2007. J. Environ. Qual. 36:1061-8.