GABAを安定生成する乳酸菌混合チーズスターター

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要約

チーズの風味をよくする株、乳酸生成力が強い株、およびGABA生成力が強い株を1:1:1の割合で混合して得られる乳酸菌混合培養物(チーズスターター)は、継代培養を繰り返した場合に3株の存在比率が長期間安定している。

  • キーワード:乳酸菌、乳酸発酵スターター、GABA、γ-アミノ酪酸、チーズ
  • 担当:畜産草地研・畜産物品質研究チーム
  • 代表連絡先:電話029-838-8685
  • 区分:畜産草地
  • 分類:技術・普及

背景・ねらい

γ-アミノ酪酸(GABA)は、血圧降下作用など人体に有益な生理作用を示す食品成分である。GABAを生成する乳酸菌を発酵スターターに用いて、GABA含量を高めた乳製品が作られている。 乳製品に特異な性質を付与するには、その性質を与える菌株をそれぞれ単独で培養し原料乳に混合接種する方法が採られている。この方法は、製造ロットによって製品の品質が異なりやすく、また、菌株の維持・培養の労力負担が株数に比例して大きくなる。一方、乳酸菌を混合培養して維持する場合、次第に菌株の存在比率が遷移してしまい、当初の能力を発揮できなくなる懸念がある。 本チーズスターターは乳酸菌3株の混合培養物であり、チーズの風味をよくする株、乳酸生成力が強い株、およびGABA生成力の強い株が長期間安定した比率で存在し、常に均一な高品質チーズの製造を可能とする。

成果の内容・特徴

  • Lactococcus lactis subsp. lactis biovar diacetylactis NIAI 01-7は、酸生成力およびタンパク質分解力が弱く、GABA生成力が強いという特性を有する。Lactococcus lactis subsp. lactis NIAI 527は、酸生成力およびタンパク質分解力が強いという特性を有する。Lactococcus lactis subsp. cremoris NIAI 01-1は、酸生成力およびタンパク質分解力が強く、チーズらしい風味を形成するという特性を有する。
  • 上記3株を1:1:1の割合で混合して得られるチーズスターターは、週1回の継代培養を繰り返すと、2回継代以降に3株の存在比率が安定する(図1)。
  • 安定存在比率に達した本チーズスターターを用いて、GABA含量が高いチーズを製造できる(表1、図2)。チーズにGABA生成の基質としてグルタミン酸ナトリウムを添加すると、さらにGABA含量を高められる。

成果の活用面・留意点

  • 本チーズスターターは特許実施許諾を行うことにより利用できる。分譲は農研機構畜産草地研究所から行う。
  • GABA生成能は、熟成型チーズを製造した場合のみ発揮される。

具体的データ

図1 混合スターター中の3菌株の生菌数(n=2)

表1 本チーズスターターを用いたチーズのGABA含量

図2 3株混合スターターを適用したチーズ

その他

  • 研究課題名:乳肉の美味しさ等の品質に影響を与える因子の解明と新たな評価法の開発
  • 課題ID:311-h.1
  • 予算区分:基盤
  • 研究期間:2004~2008年度
  • 研究担当者:野村将、成田卓美、森智之(日本全薬工業)
  • 発表論文等:野村、森(2008)「新規チーズスターター」特許第4185125号