圧縮空気で堆肥原料の好気発酵を促進するインパクトエアレーションシステム

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要約

0.7~1.0MPaの圧縮空気を堆肥発酵槽底面から短時間に噴出して、高水分の原料や高堆積原料の通気抵抗を低減するインパクトエアレーションシステムは、既設の堆肥舎に設置でき、既存のブロア等による強制通気と組み合わせることで好気発酵が促進される。

  • キーワード:家畜ふん尿、堆肥、副資材、通気、圧縮空気
  • 担当:畜産草地研・資源化システム研究チーム
  • 代表連絡先:電話0287-37-7814
  • 区分:畜産草地
  • 分類:技術・普及

背景・ねらい

家畜ふんの堆肥製造過程では、堆積した原料内部に通気して好気発酵を促進するためにオガクズ等の低水分の副資材を混合するが、調達が困難で購入費も高騰している。 そこで、副資材の節減を狙いとして、従来、強制通気が困難であった水分70~75%程度の乳牛ふんを対象に、圧縮空気の噴出で通気路を確保するインパクトエアレーションシステムを開発し、既存のブロアによる強制通気を組み合わせた通気改善方法を提示する。

成果の内容・特徴

  • 開発したシステムは、市販のコンプレッサ(発生空気圧0.7~1.0MPa)からの圧縮空気を2m3のタンクに貯留し、堆肥発酵槽底面の配管から3~5秒程度の短時間で噴出させることで、堆肥原料の内部を一時的に膨軟化しながら通気路を確保して、通気抵抗を低減する。圧縮空気を噴出した後は、開閉バルブを切り替えて、既存のブロアで強制通気を行い好気発酵を促進する(図1)。なお、開閉バルブに電磁弁を採用することで、シーケンサー等による自動運転も可能である。
  • 既設の堆肥舎(幅3m×奥行き6m×堆積高さ2m×3槽)に施工し、水分65~74%の乳牛ふんを原料とした事例では(図2)、圧縮空気作用時に原料内部が広範囲に膨軟化するのが観察され、平均気温が-5°Cの厳寒期においても2~3週目から発酵温度が上昇する(図3)。なお、発酵槽底面の通気口は、ホイルローダでの切り返し作業に対応するため配管を溝に埋設し、通気口をスリット状として、れき汁浸入防止フードで覆う構造であり、1年間、目詰まりは発生していない。
  • 地下ピット式堆肥発酵槽(幅7m×奥行き2m×深さ3.5m)に施工し、水分70%の乳牛ふんを原料とした事例では、圧縮空気を噴出した後、ブロアによる通気量が15~30%増加して通気性が改善されている。なお、原料内部を広範囲に膨軟化するために、通気口をスリット状(W30×L500mm×2ヶ所とW30×L350mm×2ヶ所)としている(図4)。
  • 圧縮空気の施用頻度は、原料の水分や物性、堆積高さによって異なり、通気抵抗低減効果をブロアの送風量で確認しながら判断する。2ヵ所の施工事例では、原料を堆積した直後に1回だけ、あるいはその数日後に2回目を施用する程度である。
  • 発酵槽容積あたりの所要経費は機器経費(建設費を除く機器類および配管費用の実績)が29,000円/m3~41,000円/m3で、運転経費(契約料金を含む高圧空気1回/日稼働とブロア終日稼働の電気代)は前出の堆肥舎に施工した事例では640円/m3/年である。また、地下ピットに施工した事例では、運転経費342円/m3/年である。

成果の活用面・留意点

  • 既存のブロアでは堆肥原料内部の通気が困難である高水分あるいは高堆積原料を対象として通気抵抗の低減に活用できる。なお、本年度から市販されている。
  • 圧縮空気施用後のブロアの通気抵抗低減効果を得るためには、原料の水分を72~73%以下に調整するのが望ましい。なお、れき汁が大量に発生する場合は、排汁機構を併設する必要がある。また、コンプレッサは長時間の連続運転に耐える仕様とすること。

具体的データ

図1 インパクトエアレーションシステムの概略図

図2 床面の配管および通気口の概略

図3 堆肥原料中心部の温度変化図4 地下ピットでの通気口の構造

その他

  • 研究課題名:家畜排せつ物の効率的処理・活用のための飼養管理システム及び資源化促進技術の総合的検証と新たな要素技術の開発
  • 課題ID:214-t
  • 予算区分:基盤、受託((社)畜産技術協会)
  • 研究期間:2006~2010年度
  • 研究担当者:本田善文、阿部佳之、宮竹史仁、岡本富夫((有)岡本製作所)
  • 発表論文等:本田ら「堆肥製造装置及び堆肥製造方法」特許公開2007-176756