地下ピットに対応できる電動ホイストを活用したクレーン式堆肥切り返し装置

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要約

堆肥化施設に敷設した天井レールを懸垂走行する堆肥切り返し装置。4基のホイストクレーンで懸垂される堆肥把持部は6mまで昇降可能で、地下ピットから原料を直接取り出すことができる。既往の堆肥クレーン同様に多頻度の切り返し作業が自動化される。

  • キーワード:家畜ふん尿、堆肥、クレーン、切り返し、自動化
  • 担当:畜産草地研・資源化システム研究チーム
  • 代表連絡先:電話0287-37-7814
  • 区分:畜産草地
  • 分類:技術・普及

背景・ねらい

堆肥製造過程での切り返し作業を自動化する堆肥クレーンが普及しているが、油圧シリンダーで昇降しているため、対応できる堆積高さに限界(およそ2m)があり、堆積表面に傾斜や凹凸(不陸)があるとグラブの水平が維持できない問題があった。そこで、小型電動ホイスト4基でグラブを懸垂して不陸に対応する方法を考案し、深さ6m、不均一な堆積面形状に対応できるクレーン式堆肥切り返しシステムを開発する。

成果の内容・特徴

  • 4基のワイヤホイストが天井走行部メインフレームに固定されており、堆肥把持部がフックブロックを介して4点各別に懸垂されている構造である(図1、表1)。油圧で開閉するレーキ状グラブで把持された堆肥原料は、ワイヤホイストで昇降し、建物の天井を長手方向に走行することで発酵槽間を搬送する。切り返し作業では、最表面の原料が次の発酵槽では最下段に、最下段の原料は最上面に堆積されるため、精度良く天地返しされる(図2)。既往の機種は把持部が走行方向に転倒するのを防止するため表面を水平に堆積する必要があったが、本機では堆肥表面へ接地したことを4基のワイヤの何れかが緩んだことで検知・停止するよう改良されているため、堆積表面の不陸や堆積端部の段差(図2の18の位置)にも対応できる特徴がある。
  • 本装置の能力は発酵槽の幅(切り返し幅)と切り返し頻度等によって異なる。また、各動作のサイクルタイム合計が発酵槽長さを制約し、発酵期間30日、堆積高さ1.8mとすれば、6日に1回の切り返し頻度で全長175m(切り返し幅10mであれば105m3/日)、3日に1回では全長150m(90m3/日)の発酵槽を1台で自動切り返しできる。
  • 全長150m(90m3/日)の発酵槽での切り返しに要する電力料金は、6日に1回の切り返し頻度で23,300円/月、3日に1回の切り返しでは28,600円/月(うち基本料金10,710円)と見積もられ、低コストで大容積の堆肥を多頻度に切り返すことができる。
  • 天井走行する構造であるため、堆肥舎の施設面積に対して80%以上を発酵槽にでき、隔壁が不要で建設コストを低減できる。また、発酵槽を地下ピット式とすれば施設面積を小さくできる。さらに、下限位置を任意に設定できるので、発酵槽床面の通気配管を溝に埋設する必要がなく、強制通気の配管施工が容易で、発酵槽底面に耕盤状の堅密な層が形成されにくく強制通気が持続する特徴がある。さらに、切り返し時に全量搬出されるので、通気口の目詰まりをメンテナンスし易い。

成果の活用面・留意点

  • 堆肥の切り返し作業だけでなく、オガクズ等のバルク状の材料を荷役する装置としても活用できる。本装置は平成20年より市販されている。
  • 本装置は撹拌作用がないため、ローダによる切り返しと同様に、堆肥の発酵を促進するためには原料の水分調整や投入時の均一化が必要である。また、堆積高さ2mを超える地下ピットや高堆積の発酵槽の場合、インパクトエアレーション等の通気性を確保する装置を併用する必要がある。なお、労働安全衛生法に則り、クレーン等運転資格が必要となる場合がある。

具体的データ

図1 天井走行ワイヤ懸垂クレーン式自動切り返し装置

表1 主要諸元

図2 切り返し動作

その他

  • 研究課題名:家畜排せつ物の効率的処理・活用のための飼養管理システム及び資源化促進技術の総合的検証と新たな要素技術の開発
  • 課題ID:214-t
  • 予算区分:基盤
  • 研究期間:2006~2010年度
  • 研究担当者:阿部佳之、本田善文、宮竹史仁、岡本富夫((有)岡本製作所)