畜産や耕種農業からの温暖化ガス等の環境負荷量を試算する支援ツール

※アーカイブの成果情報は、発表されてから年数が経っており、情報が古くなっております。
同一分野の研究については、なるべく新しい情報を検索ください。

要約

対象地域の家畜飼養頭数、輸入飼料量、自給飼料、耕種農業における作物別作付面積等のデータから、LCAを用いて環境負荷量を算出する。自給飼料、ふん尿処理方式、作物等の組合わせに対し、環境負荷量がどのように異なるかが簡単に試算できる。

  • キーワード:LCA、環境負荷、畜産、耕種農業
  • 担当:畜産草地研・畜産温暖化研究チーム
  • 代表連絡先:電話029-838-8679
  • 区分:畜産草地
  • 分類:行政・普及

背景・ねらい

地球温暖化抑制や環境保全の取り組みのなか、環境負荷の小さい個別要素技術や農業生産システムが求められており,各技術の有効性の評価や生産における負荷物質排出量を把握する必要がある。現実には各畜種の飼養頭数、自給飼料の量、ふん尿処理方式、作付け作物の品目、作付け面積等の多くの要因の組合わせが考えられ、環境負荷の計算が煩雑となる。そこで、製品を構成する原材料の採掘から製品の廃棄まで含めた全ての過程における環境への影響を評価する手法であるライフサイクルアセスメント(LCA)を用いて、対象地域の畜産-耕種農業系の環境負荷を試算できるツールを開発する。

成果の内容・特徴

  • 本ツール(名称:畜産-耕種農業系環境負荷計算支援ツール)の計算手順を図1に示す。システム境界に含まれるプロセスは、輸入飼料の海外での生産、日本までの輸送、自給飼料生産、畜舎管理、ふん尿処理、堆肥輸送、耕種作物栽培である。デフォルト値としての各種のデータセットは、Microsoft Excelのファイル形式で収録されている。畜産施設からの環境負荷ガス揮散量の試算が可能であるところが特徴的である。土壌由来、家畜由来、作物栽培由来の環境負荷量、比較の指標である機能単位として単位耕地面積当たりの排出二酸化炭素等量等が計算され、結果はMicrosoft Excelのファイルにも出力される(図2)。各プロセスの負荷量が計算されるので、機能単位を独自につくることができる。
  • 自給飼料、ふん尿処理方式や作付け作物品目、作付面積等を変化させた複数シナリオ間において、計算される機能単位や二酸化炭素,アンモニアガス,亜酸化窒素,メタンガス等の大気汚染負荷量と施肥基準に従い圃場に投入できる堆肥量以上に生産される堆肥量(施肥されない堆肥量と呼称),エネルギー消費量,圃場における余剰窒素量等を比較することで、環境負荷の少ない生産体系や新たな技術の評価ができ、政策の意思決定に有効である。
  • 本ツールの使用事例として、肉用牛への粕類給与によるメタン産生抑制技術の環境負荷を比較すると,粕類給与区は対照区に対し,各環境負荷が軽減すると試算される。温暖化影響において,生ヌカ区のふん尿処理では対照区より温暖化負荷は約2%大きいが,牛からのメタン産生,餌の生産ともにそれぞれ約18%、16% 低くなり,全体として負荷は約15%小さくなると試算される(図3)。

成果の活用面・留意点

  • Microsoft Visual Basicで作成され、Microsoft Excelに連動している。
  • 入力データセットを変えることで、1つの農場から県の全農場の一括処理による県単位まで分析対象を変えることができる。
  • 対象地域ごとにデータセットのデフォルト値を変更することが望ましい。
  • 輸入飼料による環境負荷量を計算するために、畜産における飼料設計を事前に行い、輸入飼料の量を計算する必要がある。
  • 本ツール(畜産-耕種農業系環境負荷計算支援ツール)の入手については担当者に問い合わせのこと。

具体的データ

図1 環境負荷量の計算手順

図2 計算結果の表示と出力ファイル

図3 肉用牛へ粕類を給与した場合の本ツールの使用結果の事例

その他

  • 研究課題名:気候温暖化が畜産に及ぼす影響の解明とそれに対応した生産管理技術の開発
  • 課題ID:215-a
  • 予算区分:基盤
  • 研究期間:2006~2008年度
  • 研究担当者:池口厚男
  • 発表論文等:池口(2008)日草誌54(2):168-173 池口(2009)畜産-耕種農業系環境負荷計算支援ツール,
                       職務作成プログラム (機構登録番号 機構-G05)