草地表面へ施用した被覆窒素肥料の肥効

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要約

被覆窒素肥料による窒素溶出のコントロールにより、年1回の施肥でも年2回施肥の慣行区より高い牧草収量と窒素吸収量が得られ、窒素を2割減肥しても慣行区と同等以上の牧草収量と窒素吸収量が得られる。

  • キーワード:草地、被覆窒素肥料、窒素、放牧、減肥
  • 担当:畜産草地研・山地畜産研究チーム
  • 代表連絡先:電話0267-32-2356
  • 区分:畜産草地
  • 分類:技術・参考

背景・ねらい

放牧は省力的な家畜飼養管理方法であるが、近年は労働力不足等の理由から、より省力的な管理が望まれている。そのため、施肥管理面での改善方法として、積算温度に依存して肥料溶出を行う被覆窒素肥料を用いて追肥回数の削減、減肥が考えられる。しかし、同肥料の放牧地への導入に関する知見は極めて少ない。そこで、被覆窒素肥料の草地での溶出特性と牧草への効果を明らかにする。

成果の内容・特徴

  • 気温データを基に溶出シミュレーションを行うと、1回のみの施肥で6月から8月かけての溶出を想定したシグモイド型被覆窒素肥料(図1左図)の組み合わせ(被覆窒素S区:表1)と、1回のみの施肥で期間内の平均的な溶出を想定したリニア型被覆窒素肥料(図1左図)の組み合わせ(被覆窒素L区:表1)により、想定通りの窒素溶出が行われる(図1右図)。
  • 慣行区では施肥直後の刈り取り時に収量が増加するのに対して、被覆窒素S、L区では窒素溶出量の増加に伴って収量が増加し、特に被覆窒素S区では8、9月の収量低下が抑えられ7月から9月にかけて収量が維持される(図2)。
  • 慣行区の年間合計乾物収量及び窒素吸収量を100%とした場合、被覆窒素S、L区では113~116%と高くなり(図3)、また窒素を2割減肥した被覆窒素S、L減肥区においても慣行区と同等となる。
  • 被覆窒素肥料による窒素溶出のコントロールにより、年1回の施肥でも年2回施肥の慣行区より高い牧草収量と窒素吸収量が得られ、窒素を2割減肥しても慣行区と同等の牧草収量と窒素吸収量が得られる。

成果の活用面・留意点

  • 放牧草地への被覆窒素肥料導入に必要な基礎データである。
  • 試験地は標高約1000mに位置し、オーチャードグラスが優占する。試験期間(4月から10月)の積算気温は2926°C(3年間の平均値)である。
  • 放牧家畜の排泄物による影響を除外するため、無放牧条件で行った試験の結果である。

具体的データ

表1 施肥処理の概要

図1 2006 年試験時の積算窒素溶出率(左図)と期間毎窒素溶出量(右図)の推移

図2 2006 年試験時の乾物収量の推移

図3 年間の合計乾物収量と窒素吸収量

その他

  • 研究課題名:放牧技術の普及に向けた家畜生産技術の高度化と多様な飼料資源を活用した放牧技術の開発
  • 課題ID:212-d.5
  • 予算区分:基盤
  • 研究期間:2006~2008年度
  • 研究担当者:山田大吾、江波戸宗大、渋谷岳