草地更新に伴う亜酸化窒素の排出量

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要約

草地更新は亜酸化窒素の排出量を増大させる。草地更新から約2カ月間の亜酸化窒素の排出量は、2005年が5.3 kg N ha-1、2006年が2.1 kg N ha-1である。2005年は2006年より更新時の土壌水分と更新後2週間の降雨量が多い。

  • キーワード:亜酸化窒素、降雨量、作物残渣、草地更新、土壌水分
  • 担当:畜産草地研・草地多面的機能研究チーム
  • 代表連絡先:電話0287-37-7096
  • 区分:畜産草地、共通基盤・土壌肥料
  • 分類:研究・参考

背景・ねらい

草地の生産性を維持するため、7~8年に1回の草地更新が推奨されている。更新時には永年牧草の根系であるルートマットが刈株とともに土壌に鋤込まれ、土壌がかく乱されるため、亜酸化窒素(N2O)フラックスが増加する可能性があるが、更新後のN2Oフラックスの情報は極めて少ない。本研究は更新後のN2Oフラックスを測定することを目的とする。

成果の内容・特徴

  • 那須のオーチャードグラス採草地(火山灰土壌)で、8月下旬に草地更新を行い、播種時施肥として40 kg N ha-1を表面散布したところ、更新草地からのN2Oフラックスは更新を行わない草地(対照草地)より高まる(図1a、2a)。特に、2005年の更新草地では3日後2796 μg N2O-N m-2 h-1、4日後3659 μg N2O-N m-2 h-1と非常に高い(図1a)。
  • 2005年8月19日~10月26日(67日間)のN2O排出量は、更新草地、対照草地で、それぞれ5.3、2.8 kg N ha-1(図1a)、2006年8月21日~10月26日(65日間)のN2O排出量は、それぞれ2.1、0.96 kg N ha-1である(図2a)。
  • 更新草地では対照草地に比べ土壌中の硝酸態窒素の濃度が高まる(図1b、2b)。更新後の土壌中の硝酸態窒素の濃度は、2006年の方が2005年より高い(図1b、2b)。更新前の土壌中のアンモニア態窒素の濃度は、2005年の方が2006年より高い(図1c、2c)。
  • 更新草地では対照草地に比べ土壌水分が低く推移する(図1d、2d)。2005年は、更新草地と対照草地で、それぞれ75~90% WFPS、90~100% WFPS、2006年は、それぞれ65~75% WFPS、70~80% WFPSの範囲に分布する。更新時の土壌水分は、2005年の方が2006年より多い。
  • 更新後2週間の降雨量は、2005年(152.5 mm)の方が2006年(86.5 mm)より多い(図1e、2e)。

成果の活用面・留意点

  • 日本の草地で温室効果ガスの排出量を抑制する管理技術を確立するための基礎データとして活用される。
  • 土壌水分や降雨量が少なく地温が低い時期に更新を行えば、N2Oの排出を抑制できる可能性があるので調査する必要がある。

具体的データ

図1 2005年の更新時のN2O排出量と土壌環境因子(矢印は更新時期を示す)図2 2006年の更新時のN2O排出量と土壌環境因子(矢印は更新時期を示す)

草地更新方法

その他

  • 研究課題名:草地生態系の持つ多面的機能の解明
  • 課題ID:421-b
  • 予算区分:基盤、委託プロ(温暖化)
  • 研究期間:2005~2008 年度
  • 研究担当者:森昭憲、寳示戸雅之
  • 発表論文等:(1) Mori A. and Hojito M. (2007) Soil Sci. Plant Nutr. 53: 812-818