ギニアグラスのアポミクシス未熟子房に特異的に発現する新規遺伝子

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要約

発現遺伝子解析から、アポミクシス関連遺伝子群を選抜した。選抜した遺伝子群の発現を定量PCRによって確認し、アポミクシス未熟子房に特異的に発現する3つの遺伝子を特定した。ギニアグラスのアポミクシス機能解明のための候補遺伝子として利用できる。

  • キーワード:ギニアグラス、イネ科牧草、アポミクシス、未熟子房特異的発現
  • 担当:畜産草地研・飼料作物育種工学研究チーム
  • 代表連絡先:電話0287-36-0111
  • 区分:畜産草地
  • 分類:研究・参考

背景・ねらい

暖地型イネ科牧草のギニアグラスは、種内にアポミクシスと有性生殖の系統をもつため、アポミクシス関連遺伝子単離のためのモデル植物として利用されている。発現遺伝子解析は近年蓄積しているアポミクシス関連ESTを含む遺伝子配列データベースを利用できるため、アポミクシス遺伝子単離を試みる戦略として有効である。そこで、本研究ではマイクロアレイと遺伝子配列情報を用いた機能予測からアポミクシス関連遺伝子群を選抜し、未熟子房での発現を定量PCRによって確認することで、アポミクシス未熟子房で特異的な発現をする遺伝子の探索を行う。

成果の内容・特徴

  • マイクロアレイに供試する遺伝子群はアポミクシス発現が予想される未熟花穂より単離したmRNA由来の10万クローン規模のcDNAライブラリーから選抜した4608クローンである。
  • アポミクシス雌蕊で発現が認められる遺伝子群をマイクロアレイで検出し、そのうち、196個について、DDBJ(DNA Data Bank of Japan)に登録し、登録番号はDB999756-DB999951である。
  • DDBJを利用して196個の遺伝子群はEST(遺伝子配列情報、Expressed Sequence Tag)配列から機能推定し、アポミクシス関連候補の遺伝子を選抜できる(表1)。
  • さらに、定量PCRによる発現解析を行った遺伝子のうち、他の生物での発現が知られていない未知の遺伝子P0165、および、花器官特異的遺伝子P0195は、未熟子房初期に特異的で、かつアポミクシスで有意に高い発現が認められる(図1)。
  • 機能未知遺伝子P2574の発現量はアポミクシス未熟子房で有意に高い(図1)。

成果の活用面・留意点

  • 新規遺伝子はアポミクシスにおいて特異性が高く、アポミクシスの機能解明を大きく前進させる
  • データベースに公開しており、さらに広範にイネ科未熟胚に特異的な遺伝子研究にも利用できる。

具体的データ

表1 アポミクシス雌蕊で発現が認められた196ESTの内訳

図1 アポミクシス未熟子房で特異的な発現をする3遺伝子の相対発現量比較 異符号間で有意差あり。ナツカゼ:アポミクシス品種、農1号:有性生殖系統ナツカゼおよび農1号の初期と中期は、発育ステージの異なる未熟子房。

その他

  • 研究課題名:飼料作物の育種素材開発のためのDNA利用技術と遺伝子組み換え技術の開発
  • 課題ID:221-1
  • 予算区分:新技術・新産業創出(生研センター)
  • 研究期間:2006~2008年度
  • 研究担当者:秋山仁美、秋山征夫、蝦名真澄、高原学、高溝正、杉田紳一
  • 発表論文等:Yamada-Akiyama H. et al. (2009)Jornal of Plant Physiology 166:750-761