吊り上げ式の簡易ロールベール荷役具

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要約

フォークリフト等により簡易にロールベールを吊り上げられる荷役具。荷役中のロールベールに生ずる変形は極めて少なく、サイレージ品質劣化リスクの低減およびロールベールの流通合理化が図られる。

  • キーワード:ロールベール、吊り上げ、荷役、調製・飼養機械
  • 担当:畜産草地研・飼料調製給与研究チーム・関東飼料イネ家畜飼養研究サブチーム
  • 代表連絡先:電話0287-36-0111
  • 区分:畜産草地、共通基盤・作業技術
  • 分類:技術・普及

背景・ねらい

転作田で生産される飼料イネ等はロールベール形態で畜産農家へ輸送される。コスト低減等のために輸送作業の外部委託は重要だが、ロールベールの荷役にはベールグラブ等の専用器具を必要とするだけでなく、ロールベールの変形やラップフィルムの破損による品質劣化リスクを減らす必要もあるため、輸送を受託できる運輸業者は極めて限られている。 そこで、ロールベールの輸送だけでなく、一連の荷役作業を含めて運輸業者へ委託できるように、運輸業界で広く用いられるフォークリフトに対応した簡易な荷役具を開発する。

成果の内容・特徴

  • 開発荷役具は、巾着式のフレコンバッグを応用したもので、吊りベルト4本・胴巻きベルト・吊りベルト(底部側)を開閉する巾着式の補ていロープ(ストッパー付き)により構成される(図1a)。また、収納時には折りたたみできる。
  • 開発荷役具は1.9kgと軽量であり、胴巻きベルトの開口部直径を調節することで、直径0.85~1.1mのロールベールに適用できる。また、5.9kNの垂直荷重による繰り返し頂部吊り上げ試験(70反復)にて、吊りベルト・補ていロープ・ストッパーの損傷が起こらないことから、開発荷役具は、600kg以下のロールベールの吊り上げに十分な強度を有する(表1)。
  • 使用の際には、吊りベルト(底部側)を解放した状態でロールベールの上方から荷役具を被せ、その後補ていロープによって吊りベルト(底部側)を締めるとともにストッパーを固定する(図1b)。これにより保持されたロールベールは、吊りベルト(上部)を引き上げることで荷役される(図1c)。なお、荷役中のロールベールに生じる変形量は0.1~3.2mmと少なく(表2)、ラップフィルムの損傷もない。
  • 開発荷役具のロールベールへの装着作業時間は41~45s/個、取り外し作業時間は25~28s/個と短く(表3)、作業は1名で可能である。

成果の活用面・留意点

  • ストックヤードに集積されたロールベールの荷役や、圃場からのロールベール搬出に活用できる。
  • 平成21年度より、受注生産による市販が始まっている。
  • 使用時には、ストッパー、補ていロープ、補ていロープ接続部等の損耗状態をチェックする必要がある。

具体的データ

図1 開発した荷役具の概略

表1 ロールベール荷役具の諸元

表2 荷役によるロールベール変形量

表3 荷役具のロールベールへの着脱時間

その他

  • 研究課題名:発酵TMR利用のための大規模生産・調製・流通・給与技術の開発
  • 中課題整理番号:212f
  • 予算区分:基盤
  • 研究期間:2009年度
  • 研究担当者:松尾守展、浦川修司、喜田環樹
  • 発表論文等:松尾ら(2010)日本草地学会誌、56(1):56-59